アジア

ホメイニ師の「柔軟さ」と、酒とイスラームと歴史について若干 -高野秀行『イスラム飲酒紀行』を読んで-

高野秀行『イスラム飲酒紀行』を読んだ。 面白い。 時間がないので、特に面白かったところだけ。イスラム飲酒紀行作者: 高野秀行,森清出版社/メーカー: 扶桑社発売日: 2011/06/25メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 102回この商品を含むブログ (34件) を見…

読売新聞が、サッカーチームの訪朝を後押しした時代 -在日サッカーが「最強」だったころ- 木村元彦『蹴る群れ』を読む

木村元彦『蹴る群れ』(文庫じゃない方)を読んだ。 とりあえず、興味深かったところだけ。 (本当は、小幡忠義氏や、イルハン・マンスズやサビチェビッチのこととか、書きたかったのだが、まあ、いいや。)蹴る群れ【電子書籍】[ 木村元彦 ]ジャンル: 本・雑…

ともあれ、「加害者の顔が見えない"和解"は茶番である」というような話。 -梶谷懐『「壁と卵」の現代中国論』再読-

梶谷懐『「壁と卵」の現代中国論』を読んだ。「壁と卵」の現代中国論: リスク社会化する超大国とどう向き合うか作者: 梶谷懐出版社/メーカー: 人文書院発売日: 2011/10/14メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 59回この商品を含むブログ (38件) を見る 2011…

「急ぎすぎてはいけない」、あるいは、チベタンコミュニスト・プンツォク=ワンギェルの半生 -阿部治平『もうひとつのチベット現代史』雑感-

阿部治平『もうひとつのチベット現代史 プンツォク=ワンギェルの夢と革命の生涯』を読む。 知る人ぞ知る、プンワンの半生を綴った好著である。 彼が何者かについては、Wikipediaの記事を見てくれれば分かる。 (ただ、「帰国後、中国共産党の下部機関に組み…

黒船は鉄製ではなかった

矢部宏治『本土の人間は知らないが、沖縄の人はみんな知っていること 沖縄・米軍基地観光ガイド』を読んでいたら、「黒船っていうのも、防腐剤として木材にタールをぬっていたから黒かっただけで、鉄製じゃなかった」という記述があった。 意外に知らない人…

米軍が歪めた戦後沖縄経済

以下、『沖縄「自立」への道を求めて―基地・経済・自治の視点から』からの引用とコメント。 ■沖縄の経済と、国内格差の実態■ たとえば沖縄県の県民所得は、全国で最も低い。しかしその額をドルに換算して先進工業国のリストに並べてみると、中位か下位あたり…

重大なものが書き落とされたとき、あるいは「セカイ系」な記事 -とある産業経済新聞の記事を読んでの感想-

産経新聞の記事を読んで、すごく違和感があったので、書いていきます。 (「教師が反日誘導「日本人に拉致を言う権利はない」 元生徒が朝鮮学校の実態告発」) ここで問題として扱うのは、?この文章そのもの「フィクション性」、すなわち(この高校生が"実在…

農業と「食の安全」の実情について -自給率と食中毒-

丸川知雄『「中国なし」で生活できるか』を読む。 まあ、結論から言うと、現状できない。 幾つか面白い所を取り上げたい。 例えば、無農薬・減農薬に向いているのは、むしろ中国というお話。 山東省は日本向け野菜の最大の産地に当たる。 日本より乾燥した気…

英語が訛って何が悪いか!! -World Englishesのニホン英語のすすめ-

末延岑生『ニホン英語は世界で通じる』を読む。 ニホン英語に対する批判として、「日本人の英語のレベルが落ちる」という噴飯ものの批判があるらしい。 これに対する著者の反論はこうだ(114頁)。 じゃあ、そう心配する日本人の英語のレベルはどうかのか…

"主体思想"を北朝鮮が使い始めた頃 -中朝関係の悪化していた時期について-

「読者を選ぶという事は――資本家が顧客を選ぶのと質としては同じなんです」 この一文を、とあるブログのコメント欄で見かけた。 正直、そのブログの記事は、どーでもいい内容だったが、このコメ欄の一文は良かった。 「読者に分かりやすく書く」ということの…

少数民族問題とスルタンガリエフ 山内昌之『スルタンガリエフの夢』(3)

■入植者たちの【敵意】■ ロシア帝国主義の入植民の末裔たちは、ムスリム隣人の民族的アイデンティティや失われた権利の回復に露骨な敵意をあらわしていた。「大ロシア排外主義」や「植民地主義」の熱心な担い手になったのも、このロシア人農民たちであった。…

「マイノリティ/マジョリティ」としてのタタール人 山内昌之『スルタンガリエフの夢』(2)

■ロシア人とその他の民族との格差■ ツァリーズムに圧迫された民族内部の「階級対立」は、かれらが植民地主義者や大ロシア排外主義者たるロシア人ブルジョアまたは末端の入植民に対抗して、「プロレタリア民族」として一緒に行動するのを妨げるほど鋭くなかっ…

「日台戦争」あるいは、「芸」のためのガイドブック 特別番外編(0)(本田善彦『台湾総統列伝』)

http://d.hatena.ne.jp/higeta/20090509/p1 に捧ぐ■はじめに■ 「コメント欄の容量にも限りがあります」とブログの管理人が書いているのに、なかなか止められない人はいるものです。まるでアメリカが止めても入植をやめなかったイスラエルのようです(もしか…

「漢民族」とは何か?、ある「台湾人」をめぐって 番外編(3)(本田善彦『台湾総統列伝』)

■?に対して■ 次に移ります。NHKの例の番組で、台湾人のある人物について、「中国福建省から移り住んできた漢民族」との表現を行ったことに対して、批判が挙がりました。果たして、この人物に対して、「漢民族」と表記することは、妥当なのでしょうか。 具体…

「日台戦争」・「台湾征服戦争」が「戦争」であることの妥当性 番外編(2)(本田善彦『台湾総統列伝』)

■?について■ 次に、「日台戦争」(「台湾征服戦争」)という表記の妥当性の問題です。先述したとおり、学術的用語の問題ですので、台湾の人々が聞いたことがない云々等は、大きくは関係しません。また、「日台戦争」という用語を、この事件に対して使うこと…

1910年日英博覧会の「展示」への「人間動物園」という表記の妥当性 番外編(1)(本田善彦『台湾総統列伝』)

なにやら、「NHKスペシャル シリーズ 『JAPANデビュー』アジアの“一等国”」という2009年4月に放映された番組に対して、「抗議」云々があったそうで、wikipediaの項目を見てみました。その「批判」された点は大まかに三つ。 ?1910年にロンドンで開かれた日英…

侯孝賢の『悲情城市』のはなし 本田善彦『台湾総統列伝』(5)

■侯孝賢の『悲情城市』について■ 蔣経国は、70年代以降民主化を進め、国民党以外の政治勢力の活動も容認されるようになります。そして彼の死後、李登輝が政治的実権を着実に握ろうとしていた1989年に、公開された映画が侯孝賢の『悲情城市』です。87年には…

ニ・ニ八事件と共産主義者たち 本田善彦『台湾総統列伝』(4)

■ニ・ニ八事件、及び相互不信の問題■ 本書でも、ニ・ニ八事件は取り上げられています。本件のいきさつについて、引用できるものを孫引きしようと思います(矢吹晋「映画「悲情城市」と田村志津枝著『悲情城市の人びと』」(『蒼蒼』98 年 2月10日、逆耳順…

台湾のアイデンティティと、中国共産党の存在 本田善彦『台湾総統列伝』(3)

■本書に対する批判に対する反批判■ 著者の第五章に関しては、すでにウェブ上に書評が存在しています。これに突っ込みを入れなら、本書の著者の主張を見ていきましょう。その書評というのが、「書評『台湾総統列伝』−「中立的視点」を斬る」です(この書評の…

蒋介石の「日本精神」 本田善彦『台湾総統列伝』(2)

■蒋介石の「日本精神」■ 本書では、父親・蒋介石についても、いろいろな情報を載せています。 例えば、台湾・中華民国での経済的基盤について。日本側が残した資産は、その多くが政府と国民党の資産となります(11頁)。 たしかにこれは常識的ですが、さら…

蒋経国による台湾民主化の行方 本田善彦『台湾総統列伝』(1)

・本田善彦『台湾総統列伝 米中関係の裏面史』中央公論新社 (2004/05) 米中両大国とのあいだで揺れる小国・台湾の歴史が、国家のトップである総統の「列伝」を通して描かれています。列伝に描かれているのは、蒋介石、蒋経国、李登輝、陳水扁の四人です。こ…

マングローブの復讐譚 出雲公三『カラー版 バナナとエビと私たち』(2)

■マングローブの怒りとしての【下痢】■ 確かに、現実的には「生水を口にした少年が腹を壊した」とするものでしょう。しかし、氷を口にするシーンとおなかを壊すシーンとの間に、マングローブの伐採されたシーンが挟まれることで、その、意味づけは変容します…

なぜフィリピンの子供たちは、エビの頭を食べるのか 出雲公三『カラー版 バナナとエビと私たち』(1)

出雲公三『カラー版 バナナとエビと私たち』岩波書店 (2001/10) 「日々の生活のなかで口にするあふれるような食品の向こうに、どんな人たちの暮らしが息づいているのか、どんな問題が起きているのか」。この問題提起がテーマとなる本書では、小学生たちが自…