文学
金子兜太、いとうせいこう『他流試合 兜太・せいこうの新俳句鑑賞』を読んだ。 これを読めばきっと俳句の面白さが貴殿にも分かる(という煽り)。他流試合―兜太・せいこうの新俳句鑑賞作者: 金子兜太,いとうせいこう出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2001/04…
中村光夫『風俗小説論』の文庫版(新潮文庫)を読んだ。 これで何度目なのか。風俗小説論 (新潮文庫)作者: 中村光夫出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1958/05メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 7回この商品を含むブログ (5件) を見る 意外と読まれていないんじ…
小谷野敦『私小説のすすめ』を読んだ。 あの猫猫先生が書いた、と理解していれば、実に面白く読める。 小説に興味のある人は、読んで損なし。 知識は間違いなく身に付くし、著者の主張から学ぶべきところは多い。 「文学とか文学史からみればかなり画期的で…
阿部良雄『ひとでなしの詩学』を読んだ。 詳しい内容については既に、書評がウェブ上に存在する。(良い阿部良雄入門にもなっているので一読してほしい。) 以下、気に入ったところだけ書く。 写実主義から印象主義へと、描く対象が市井の人々や見慣れた風景…
アラン・ド・ボトン『旅する哲学 大人のための旅行術』を読んだ。 以前、同じ著者による『プルーストによる人生改善法』についても取り上げたことがあるが、やはりこの本も面白い。 特に面白いと思ったところだけ取り上げる。 ディオゲネスは「ギリシア人と…
品田悦一『斎藤茂吉』を読む。 著者は、『万葉集の発明』を書いた人。 前著もそうだったけど、面白い。 茂吉だけでなく、それ以外の主張も面白い。 気になった所だけ。 茂吉の訛りは酷かった(32頁)。 彼の晩年の歌の朗吟を聞けば分かるが、結構訛っている…
石川美子『自伝の時間―ひとはなぜ自伝を書くのか』を読む。 本書の紹介にあるように、わたしはなぜ今ここにいるのか。ロラン・バルト、プルースト、スタンダールなどのフランス自伝文学が物語る、愛する者を失った「喪」の苦悩のなかから求める「新たな生」…
つぎの清水浜と、そのつぎの歌津はいずれも小さな漁港であった。家が少ないからホームを埋めつくすほどの人はいない。そのかわり手足を動かすことができるから、いろいろなことをやってくれる。けさ仙台で読んだ地方新聞によると、きょうのために一ヶ月も前…
■渇きは水の欠如ではない。■ 渇きは、沈黙がたんなる言葉の欠如ではないのと同様に水の欠如としてあるのではなく、体内にわずかに残った水分の、声にならない叫びではないのか。 (某書より引用)■古井由吉と、死からの拒絶■ 古井由吉的存在は、死からは拒絶さ…
■ウィーンのカフェを生んだ、酷い住宅事情■ ウィーン郊外のいたるところに貧民窟がひしめいてた。ある記録によると、一八九八年から一九〇二年までの五年間に約四十万の人口増加があったにもかかわらず、十一万四千の住居がふえたにすぎず、しかもその大半は…
■ある種のオマージュですかね。■ たしかに『ボヴァリー夫人』『ノーサンガー・アベイ』『ドン・キホーテ』の語り手は、主人公がかけている物語メガネに段階的に冷や水を浴びせ、罅を入れていった。 […] むしろ三人の小説家は、既存ジャンルを愛すればこそ、…
■ワーズワス、この近代文学の祖■ 平易な言葉遣い、自然の賛美、幼年期への郷愁、貧しい人々への共感、闇の力への畏怖など、ワーズワス詩の特徴は多岐に渡るが、瞑想的な傾向がとりわけ強い。自然を前にして人間が受ける感覚的な印象を […] 形而上学的な想像…
■ハロルド・ブルーム自身の「影響の不安」?■ とにかく、自分で規定した抒情詩の原型が遵守されるか否かだけがブルームにとっての関心事だからであり、おのれの築いた「影響の不安(anxiety of influemce)」なる理論を当てはめるために、先行詩人の名前を列挙…
■第二帝政、あるいは抑圧された時代の文学■ ルイ・ボナパルトのクーデタの後、ユゴーやウージェーヌ・シューは亡命し、歴史家ミシュレとキネはコレージュ・ド・フランスの教職から追われ、ゴーチエは社会的現実に背を向けて象牙の塔に閉じこもった。フランス…
田中貴子『検定絶対不合格教科書古文』を読む。 中身は実にまっとうな本。 信じられないかもしれないが、実に、まともだw 清少納言は、高慢ちきな女として一般に思われているけど、実際の所、彼女が『枕草子』に書きたかったことって、中宮を中心とするサロ…
またも、齋藤希史『漢文スタイル』 を読む。漢文スタイル作者: 齋藤希史出版社/メーカー: 羽鳥書店発売日: 2010/04/13メディア: 単行本 クリック: 32回この商品を含むブログ (10件) を見る 著者曰く、今の時代に必要なのって、韓愈じゃなくて、焚紹述樊紹述…
齋藤希史『漢文スタイル』を再び読む。 なぜ、著者は、「漢文脈」にこだわるのか(「漢文脈」って何?ってひとはググってね)。 幕末・明治期の人、竹添井井『桟雲峡雨日記』(中国・蜀地方に滞在していた時の日記)に言及して著者は言う。 彼の記述の中には…
齋藤希史『漢文スタイル』を読む。 記事の中に、重複する箇所がいくつもあるけど、それを差し引いても実に面白い。 中国における隠者たち、隠遁して政治の舞台から隠れて生きる人々。 陶淵明とか、想像するとわかりやすいと思う。 この隠者たちは、前代の隠…
穂村弘『短歌という爆弾』を読む。 俵万智の歌。 砂浜に二人で埋めた飛行機の折れた翼を忘れないでね この歌のポイントは、桜貝とかじゃなくて、「飛行機の折れた翼」を選択したことにある(117頁)。 読者は、自分の体験とかけ離れた一撃を通過すること…
三たび、佐藤亜紀『小説のストラテジー』を読む。 西欧において、回想録はどのような意味を持つか。 それは自分の事跡を後世の歴史に残すためであり、彼らは日記でさえも、それを目的に綴っている(179頁)。 回想録と言うのは、見て欲しい自分を描くため…
再び、佐藤亜紀『小説のストラテジー』を読む。 著者曰く、必然性のない店の名前や商標は、小説の古典的な技法では確かに避けるべきものだとされているけど、もし、小説の中でお茶をするのにスタバでもケンタでもなくドトールに行く必然性が、読み手にもはっ…
佐藤亜紀『小説のストラテジー』を詠む。 深層の「意味」の誘惑を拒み、あくまでも表層にとどまり溺死せよ、とのテーゼは、とっても正統派(24頁)。 何だか、蓮實重彦に近い気がする。 オスカー・ワイルドは、批評家の意見が一致しない時、作家は自分自身…
枡野浩一『かんたん短歌の作り方』を読む。 一見不真面目な著者だが、実は歌への姿勢は真摯であり、真面目。 句読点をつけると、どんな退屈な言葉だって一見意味ありげに見えちゃうんです。それは危険なワナ。記号なんか全部捨てても通用するような強い言葉…
『物語の体操』を読む。 物語を作る気などさらさらないのに、何故か読む。 物語など、いくらでも跡付け捏造すればいいじゃない、などと愚かなことを考えてしまう性分だがw 気になった所だけ。 小説を書くとき、登場人物を一度、絵にしておくと何かと便利だ…
亀井秀雄『二葉亭四迷 戦争と革命の放浪者』を再び読む。 大津事件について。 アレクサンドル3世は、内政では大弾圧をしたが、一方で、対外的には、露土戦争での従軍経験から戦争を忌避し、平和を貫いたという(155頁)。 確かに、この人、在位13年近…
亀井秀雄『二葉亭四迷 戦争と革命の放浪者』を読む。 彼がいかにして、戦争に関わり、革命に関わり、生活をし、そのなかで文学や翻訳を行ったのか。 興味あるところだけ取り上げる。 坪内逍遥『当世書生気質』は、次の点で画期的だった。 近世の洒落本の場合…
川村湊『言霊と他界』(講談社学術文庫版)を読んでみる。 Wikipediaの項目に、「声に出した言葉が現実の事象に対して何らかの影響を与えると信じられ、良い言葉を発すると良い事が起こり、不吉な言葉を発すると凶事が起こるとされた」とあるように、元々言霊…
大西巨人『春秋の花』を読む。(作者のHPに、全文あり) アンソロジー集。 教養がにじみ出てて、お見事。 おれは上り坂を上って行くぞ。「死」のことはわからぬ。わからぬけれど上り坂だ。 これは、中野重治の短篇からの引用。 すごいのは、これを心内語と…
アラン・ド・ボトン『プルーストによる人生改善法』をまた読む。 プルーストってどんな人? 喘息の人。 日中に多発するため、夜型生活に。 外出も控えるようになり、夏場の外出には、密閉したタクシーに閉じこもる他なかった。 部屋でも、カーテンで窓を四六…
アラン・ド・ボトン『プルーストによる人生改善法』を読む。 期待してた以上にに面白かった。 プルーストってどんな人? ある当時の駐仏英国大使曰く、「これまで私が出会った中で一番驚くべき男だ」 なぜか。 「なにしろディナーのあいだも外套を着たままだ…