またしても、山本直治『実は悲惨な公務員』を読む。
仮にある役所が、本当に必要な政策ができて、翌年組織と定員を拡充したいと考えたとする。
でも、昨今の財政難もあって、そう簡単にできない。(著者曰く、政治的な決断があれば別らしい)
そこで、人員や組織(つまり予算)を余らせておいて、内部留保し、しかるべきときに、「振り替え」するわけだ(112頁)。新規で増やすより、こっちのほうが、ずっと楽チン。
以上から分かるように、なぜ、役所の予算や組織や人員を総簡単に削れないのかといえば、皮肉にも増やしづらいからなんだよね。
逆にいうと、「小さな政府」支持派の人は、早急に予算・人員の増減が出来るシステムを考えなきゃいけなくて、場合によっては、そのシステムのせいで予算がかえって増えてしまうリスクも考えなきゃいけない。
公務員の場合、工夫したり頑張ったりして、てきぱき仕事を済ませてさっさと帰ると、翌年、その部署は仕事が楽だからと、配置人員が減らされる可能性がある(98頁)。
要するに、頑張っても報われないシステム。
インセンティブ効かない。
改革のパラドックス。
公務員の場合、組織の内部改革は、恩恵を受けるのは自分の後任。でも苦労するのは自分、そして、巻き込まれた周囲。
また、こういう内部改革は、自分の手柄として、アピールが外部にしにくい(142頁)。
そりゃ、内部改革なんて出来ない。
どうしたらいいものか。
組織内外を巻き込んで、大々的な表彰をするしかないように思う。名誉に訴えかけるとか、選択肢はそれくらいですよ、方法としては。
行政のパンドラの箱(つまり、不正の温床)は、仮に、ある公務員が解決しようと決意しても、一人では背負い込めない。
まず、特定部局のメンバーが巻き込まれる。
そして事態がもっと大きくなれば、プロジェクトチームを特別に組むことになって、ほかの部局から、人を動員することにもなる。
結果、その他いろいろな人たちに、「迷惑」かけることに。
しかも、この箱を空けた人間は、問題発覚時の責任者ということで、相当な確率で、出世競争に大ダメージ。
何てこった、ぜんぜん報われない orz
著者曰く、内外からの告発でばれたならともかく、勇気出して箱を空けた人間がそうなるとわかってるなら、普通は逃げ切りたくなるよね、と(163−164頁)。
うーむ。だから結局、内部か、外部からの告発頼りなるのか。
大切なことは、褒めること。
コストを頑張って削減したことへの賞賛、市民の満足度を向上させた事への評価、そういったものが逐次供給されないと、そりゃ、公務員も疲弊する(245頁)。
ほめが大事。
あと、自分達の仕事の宣伝・アピールも、実は大事ですよ。(この詳細は、権丈先生の『勿凝学問346』をご参照ください)
最後に、公務員の件について、優れたブログ『machineryの日々』様から良記事を選んでみませう。
「ナショナルミニマムを巡る利害調整」と「政策法務」では、利害関係者の多いお役人の利害調整の大変さが、「利害関係者が組織を決める」では、お役所職員の報われなさが、各々取り上げられております。
是非ご一読を。