面白いのは、日活ロマンポルノ時代の話だけじゃないぞ!(アキラの伝説とか渡哲也のデビュー期とか) -白鳥あかね『スクリプターはストリッパーではありません』を読む-

 白鳥あかね『スクリプターはストリッパーではありません』を読んだ。*1
 面白いというしかない。
 賞も得ているので、本書を読んでいる方も多くいるだろう。

スクリプターはストリッパーではありません

スクリプターはストリッパーではありません

 以下、特に「面白い」と思った所だけ。

忙しいぞ、スクリプター

 でも、ビデオが発達してから、現場でもモニターテレビで見て演出する監督が増えてきているんですね (20頁)

 スクリプターという職業は大変である。
 スクリプト(記録)用紙は、500カットの場合、500枚。
 どんな細かいことでも書かないといけない。*2
 パンなど、カメラの動きも記録し、当然、俳優の動きも記録しなければならない。

 こうしたポジションであるため、スクリプターは現場でも良いポジション(監督の隣)を確保している。
 そうした監督に近いポジションゆえ、場合によっては、監督やほかのスタッフからアドバイスを求められたりもする。
 マジで大変そうである。

スクリプターは、まさに、「秘書」なイメージ。

 ほとんどではなく全員女性です。男性がいたら、歓迎しますけどね。 (280頁)

 スクリプターの性別について白鳥は語る。
 彼女自身が設立に尽力した日本映画・テレビスクリプター協会は、全員所属しているのは女性である。
 なお、新藤兼人監督の最初の奥さんは、スクリプターだったという。

 たしかに、イメージ的には、秘書的なポジションである。

現場では俳優を見ろ

 白鳥は、俳優の芝居は、モニター越しではなく、実際に直で見た方が、役者にとってはいいという。

 監督に見られているということが俳優にとってはすごく大事なことなんです (21頁)

 モニターで画面構成やサイズや動きを見るのはいいけど、テストと本番では必ず俳優を見ろ、と白鳥はいう。
 結構重要なアドバイスではなかろうか。 


 さて、そんなスクリプターだが、監督によってはつけないケースが出て来る。*3
 今やスクリプターなしでもデジカメで補えるので、「スクリプターをつけるのは贅沢」といわれる時代なのである。
 しかし、それでもなお、スクリプターは重宝がられている。
 記録だけじゃなくて、アドバイスもする人だからである。


 監督は孤独である。
 孤独な人が自分の補佐を求めるのは無理のない所だ。

山田五十鈴の記憶力

 山田さんは科白がすぐ頭に入ってしまう特技があったから。 (52頁)

 セリフの直しを頻繁にする、それも、本番当日に変えるマキノ雅弘監督。
 だが、山田五十鈴は凄かった、それにあっさりと対応した。
 

 ちなみに、マキノ監督は役者やってただけあって、演出の際にも、演技も上手さを見せたという。
 1908年に生まれて、1912年に子役デビュー、1926年に監督デビューした人である。

アキラの伝説

 <渡り鳥>シリーズでもアクション・シーンはすべてスタントなしで旭自信が演じています。 (96頁)

 さすがアキラ。


 白鳥によると、大部屋出身で苦労しているから、腰は低かったという。*4
 自分に撃たれる役者や照明部には、気を使って奢っていたという。
 特に、照明部は、重要な仕事なのに、あまりスポットライトの当たらない職業である。照明だけに。
 ロケとなれば、機材は重いし苦労してる。


 そんなスタッフに人気があったのが、アキラである。

さらにアキラの伝説

 ダイスを五つ壺に放り込んで開けると全部垂直に積まれている、というやつね。あれを旭がたった二回目ぐらいでやってのけたときには、スタッフや俳優、みんな息を呑みましたよ。

 映画<ダイスの眼>でのお話。
 西村晃が台詞が出てこなかったけど、しょうがなしでOKになったシーンである。
 やはり、アキラはスターだったのである。

渡哲也のデビュー時代!w

 それで小杉さんが「台詞を言う前に足を叩け」とアドバイスするわけですよ、冷静に。それで、実際に哲っちゃんが叩くと台詞が出てくる。私はそれがおかしくってね(笑) (112頁)

 『あばれ騎士道』の渡哲也の話。
 彼のデビュー作品である。
 当時新人で、キャメラの前で緊張して、セリフが出てこない。
 そこで、引用部のことが行われた。
 本書で一番笑ったのはここ。

アフレコで喜ぶクマさん、苦労するスクリプター

 一番違うのはロマンポルノはオール・アフレコ、つまり現場での録音がなかったことですよ。 (130頁)

 殺陣師ならぬ、「横師」となった白鳥。
 ロマンポルノ時代は、ラブシーンの演出もすることになった。


 それまでの日活映画ではシンクロで必ずカメラと一緒にマイクがあった。
 でも、音があるとそのぶん時間がかかる。
 神代辰巳は、現場でしゃべってない科白を勝手にしゃべらせられるので、アフレコ大好きだったらしい。
 だが、スクリプターは、口を合わせないといけないので、白鳥は嫌だったという。

ロマンポルノの撮影の現実

 ロマンポルノは撮影日数も少なくて、七〇分の作品を最大でも十日、ふつう七日で撮るということが原則で、直接製作費がだいたい七百五十万、スタジオの電気代とか間接製作費を含めると千五百万ぐらいでした (132頁)

 ロマンポルノは予算厳守だった。
 相当カネも時間もなかったのである。
 

 日活から出ていった俳優たちは、冷ややかに古巣を見ていた。
 そんな中で、岡田真澄だけが、みんな日活を残そうと頑張っているんだ、と元仲間たちを窘めたという。(岡田は日活出身。)
 印象深いエピソードである。
 

おい、にっかつ!

 クマさんはぼかしは権力に屈したことになるというので許さなくて、わざと大きく黒い物を入れて抵抗しているんですね。(略)ネガで保存してあれば、復元できるから外国版は前張りがバレバレでも使うことができるじゃないですか。ところが日活はお金がもったいないからネガで黒みを入れちゃったんですって。 (152頁)

 この話を聞いて白鳥は卒倒しそうになったという。


 ワイも卒倒しそうになったで(猛虎弁)。

そのまま映画みたいな話

 『絶頂度』のヒロインを演じた三井マリアは、ロマンポルノはこれ一本だけで引退したんですね。 (162頁)

 『わたしのSEX白書 絶頂度』の撮影中に、この仕事が終わったら結婚すると三井が言っていたらしく、どうやら相手は医者だという。
 「この映画そのままみたいな話」と白鳥はいう。
 まさに。


 そんな三井を輝かせたのは、曾根中生監督の実力である。


 ちなみに、『絶頂度』は女性ファンが多いらしい。
 「主体性」をもって自分の意思で堕ちていく点が評価してもらったのではないか、と白鳥はいう。*5

池田敏春監督の話。

 永島は、その後も『MISTY』(91)で火炎放射器をぶっかけられて、やけどしそうになったんですよ(笑) (207頁)

 「人魚伝説」でおなじみ、池田敏春監督の話。*6
 別の映画では、永島は凍傷になったりもしている。
 でも永島は池田を尊敬していたので、池田に気に入られていたという。
 池田は、兎に角現場で、美術や助監督に怒鳴っていたらしい。*7
 普段はそうでもないのに、現場に入ると豹変するタイプだったらしく、白鳥によると、師匠の曾根中生も似たタイプだったらしい。

(未完)

*1:正確には再読だが

*2:監督は演出など、別の所に気を使っているので、監督をこうして補佐する必要がある。

*3:つけないケースの方が多いか

*4:最初は生意気だったらしいが。

*5:本作では、脚本は白鳥が担当している。

*6:本作でも映画・「人魚伝説」の話をしているが、ここでは省略する。

*7:俳優とスクリプターは違ったらしいが。池田監督の生前の評判については、http://hirobaystars.cocolog-nifty.com/blog/2011/01/post-1c1e.htmlなどもご参照あれ。