2010-01-01から1年間の記事一覧
前記事より続き。■なんで武装組織ばっかだったんだよ!■ ここで一点、疑問に思われる方が、おられるかもしれません。なぜ、ワイマール共和国は、武装勢力だらけになったか。 詳細は分かりませんが、ドイツ義勇軍(フライコール)の存在が大きかっただろうこ…
著者はこの「たたかわなかった」ワイマールという話自体が神話であったのではないかと説く。ワイマール共和国はけっして自らを攻撃する勢力や運動に寛大であったわけではない。むしろ刑法の内乱罪や「共和国擁護法」を活用し、「共和国の敵」に対して言論段…
「フランスの考え方は、表現におけるメディアの自由ではなく、個人の自由ということです。個人の自由を最大化するために、メディアは国がコントロールすべきものと考えています。少数派に発言権を与えるために、弱い新聞を公的支援で助けるわけです。ところ…
■はじめに■ 今回踏み台(←失礼)となる文章はこれです。■集団的自衛権と憲法とコスト■現在の「集団的自衛権を行使しない」と解釈してきたことを説明するものの、なぜ保有すれども行使せずと解釈してきたかについては全く説明されない。 本書をよく読みましょ…
具体的なものに触れること。それは、かつて「魂の唯物論的な擁護」を説いた著者にとって、当然の振る舞いといえるでしょう。映画を観ることに対しても具体的であることを常に説き続けた著者ですが、本作でも、その批評眼に衰えはありません。 例えば、亡くな…
はてブの方で、m-matsuoka氏より素敵なコメントをいただいたので、これをいじり倒してみたいと思います。以下、適当にWikipedia等を引用しつつ、適当に弄繰り回してみましょう。( m-matsuoka氏の素敵な足跡については、「id:m-matsuoka氏に答える」(『小熊…
■ジャズと「アメリカ的」であること、あるいは抽象的な日本の知識人たち■ 某団体への怒りで終わる本書ですが、その内容は大まかに、小説と映画への言及の二種類に分かれます。いつもどおりですね。 しかし、今回は珍しくジャズについても言及していたりしま…
以下に書くのは、はてブでのやりとり。主に、かの『「デフレ」の正体』の内容に関する事柄です。やり取りは、人口減少が日本経済に甚大な影響を及ぼしている、という思想をお持ちの方とのものです。こちらの立場は、人口衰退(及び少子高齢化)はそれほどま…
・ 蓮實重彦『随想』新潮社 (2010/08)■「攻撃的」な随想■ 『随想』というタイトル。表紙には、「エッセ・クリティック」とあります。無論、これは、ロラン・バルトの同題の書物から来ているのですが、当時のバルトは(後の彼と比べて)結構戦闘的でした。 な…
■半過去という倦怠 -ナボコフによるフローベール変奏?-■ 既に、プルーストとフローベールの話をしたと思います。フローベールの文体と技巧を取り入れようとしたのは、プルーストだけではありません。プルーストを介在させる形で、ウラジーミル・ナボコフも、…
■コレット・コスプレ・性愛■ プルーストは女性的な側面がある云々という話をしましたが、次は女性の作家であるコレットについて。コレットとプルーストの間には親交がありました。ちなみに、著者は、コレットの伝記を翻訳してもいます。 「15歳年長のアンリ…
イエス・キリストの語ったという 聖書の『ぶどう園の労働者のたとえ』です。こちらの拙稿「社会保険と労働時間 -ベーシック・インカムを唱える前に- 濱口桂一郎『新しい労働社会』(5)」のコメ欄をきっかけに、その存在を知りました。読んでいくらか感想が…
それがいかなる記事、いかなるコメントであろうとも、人は優しさを隠せないものです。今回、その実例として、実に親切かつ高貴な方が例示してくださったので、早速、見てみることにしましょう。ああああ 何このくだらんゴミ投稿(´・ω・`) 文学なんて誰も…
■「後輩」プルーストのパスティーシュ■ プルーストは、さきのバルザックとフローベールのそのまた後輩に当たります。彼の鋭敏な知覚と感性は、作家の文体にも向けられています。プルーストは、優れたフローベール論を書き残しています。これをめぐって、ティ…
■バルザックとフローベール、小説観が違いすぎる■ 先に、バルザックとフローベールは、両人ともに脚フェチだよという話をしました。しかし、この二人、小説の作法がまったく違います。かたや、濫作も構うまいといわんばかりに書きまくる仕事の速いバルザック…
■『ランジェ公爵夫人』、あるいは、足フェチ作家バルザックによる足の小説について■ 本書は、オリエントへの憧憬というのが主題の一つとなっております。西欧人たちの持つオリエントへの憧れというべきものです。冒頭の「砂漠論」と、最後の一編となる「『ラ…
「日本は実は政教分離を欧米よりずっとはやく導入していたという説もあります」というコメントをいただいて、紹介された先の記事を見ました。 「福沢諭吉・新渡戸稲造・丸山眞男・森田明彦に見る、西洋コンプレックス型日本知識人の特徴」 です。 そのうち、…
工藤庸子『砂漠論 ヨーロッパ文明の彼方へ』左右社(2008/3) 本書は、『砂漠論』というタイトルで、実際に表題の一編が、冒頭に掲げられています。しかし、全編を見通すと、ヨーロッパ文明の「彼方」の事よりは、「此方」の方が主題として扱われています。 「…
守如子『女はポルノを読む 女性の性欲とフェミニズム』青弓社 (2010/02)以下、本書を読んでの取り留めのない雑感です。■抑圧された女の快楽と、「主婦/娼婦」という階層■ 女性たちは、マスターベーション一つをとってみても、「彼のため」という言い訳を必…
■「複雑性の縮減」という政治家と政党の役割■ シュミッターとカールという学者は、民主主義のためには、政治的行為者の行動に一定の予測可能性が必要である、と指摘しているそうです(239頁)。著者はその主張を肯定し、民主主義には、政治家の行動がある…
雑誌『世界』2010年8月号より■小沢批判というよりも、優れた日本政治論です■ 本論は、「小沢一郎論」という題名で、確かに小沢氏への批判の側面が濃いのも事実です。しかしむしろ、日本政治全体に対する批判、という趣が、「下」では強いように思います。 実…
以下、前回の記事の続き。 ■マクロ経済学と期待■ 三点目。藻谷氏は「投資が腐る」なる表現を用いて、ファイナンス理論は期待収益の概念があるのに既存のマクロ経済学は貯蓄があり、投資がなされればとにかく経済成長するという前提を敷いてはいないか?とい…
藻谷浩介『デフレの正体』というの本が、結構売れているようです。しかし、そのリフレ政策に対する批判は、正直、拙劣な部類です。でも探してみたのですが、ウェブ上に、本書に対する批判はあまりないようです。 例外として、「藻谷浩介 著『デフレの正体 経…
■前段■ 某掲示板の記事のコメ欄の方で、なぜか、拙記事へリンクが張られていました。どうやら、故・江畑謙介氏の普天間基地問題への言及ということで、取り上げられたようです。本当の出典元は、「軍事板常見問題&良レス回収機構」様なのですが。 詳細は、…
■再分配とリフレの関係■ 「左翼的価値観の望むことを実現するためには、不況の脱却は必要条件だということです。十分条件ではないかもしれないが、必要条件」という松尾匡先生のご意見です(注1)。再分配という問題についてなら、まったくその通りです。 …
■貨幣がもたらす、「決断の留保」という甘い毒■ その多機能性こそが「貨幣」の魅力なのであるが、その機能の使い方を一歩間違えると、社会に災いをもたらす「疫病」のような存在にもなりかねない (67頁) 優柔不断という甘美な果実を与えてくれるからこそ…
もうすぐ八月です。まあ、月日とは関係なく、小島寛之『容疑者ケインズ』など読んでみるとしましょう。おさらいということで。■乗数効果と、「よい」公共事業■ (引用者注:小野善康の論文をまとめて曰く、) 政府が税金から二兆円を使って公共事業を行って…
著者・入不二氏の「政治」論と、ジャック・ランシエールの「政治」論と比較してみましょう。その前にまず、ランシエールの政治観の紹介を。 まず、ランシエールの「政治」観とは、どんなものか。かいつまむと、「俺たちにだって、権利がある、分け前をよこせ…
(引用者注:「異者」もまた) 自分は「異者」ではなく「公共空間に住まう同じ者」であって、「排除」される理由など何もないのだ、と市民社会的で安全な言葉で語らなければならない。だからこそ、たとえば「神聖な場を大切にする(べきだ)」という点につい…
著者の方法論じたいは、あまりにも単純です。その応用がしかし、鮮やかなわけで。難しくは無いはず、なのに、立ち止まって考えてしまう。難しくないし、おおよそ、結論は見えていることなのに。今回は見所、というか、面白いと思えたところを幾つか。 プロレ…