2010-07-01から1ヶ月間の記事一覧

「よい」公共事業の話、そして金融政策との連係プレイ 小島寛之『容疑者ケインズ』(1)

もうすぐ八月です。まあ、月日とは関係なく、小島寛之『容疑者ケインズ』など読んでみるとしましょう。おさらいということで。■乗数効果と、「よい」公共事業■ (引用者注:小野善康の論文をまとめて曰く、) 政府が税金から二兆円を使って公共事業を行って…

ランシエールと、「分け前」の政治 /入不二基義『足の裏に影はあるか?ないか?』(3)

著者・入不二氏の「政治」論と、ジャック・ランシエールの「政治」論と比較してみましょう。その前にまず、ランシエールの政治観の紹介を。 まず、ランシエールの「政治」観とは、どんなものか。かいつまむと、「俺たちにだって、権利がある、分け前をよこせ…

「公共空間」における本音と建前 の問題 /入不二基義『足の裏に影はあるか?ないか?』(2)

(引用者注:「異者」もまた) 自分は「異者」ではなく「公共空間に住まう同じ者」であって、「排除」される理由など何もないのだ、と市民社会的で安全な言葉で語らなければならない。だからこそ、たとえば「神聖な場を大切にする(べきだ)」という点につい…

「神学」的なプロレス? と ニヒリズムという【意味という病】 /入不二基義『足の裏に影はあるか?ないか? 哲学随想』

著者の方法論じたいは、あまりにも単純です。その応用がしかし、鮮やかなわけで。難しくは無いはず、なのに、立ち止まって考えてしまう。難しくないし、おおよそ、結論は見えていることなのに。今回は見所、というか、面白いと思えたところを幾つか。 プロレ…

リフレ政策が「【世界の】常識」であるということ  【短評】

「熱帯夜に、「アンチ・リフレ派」をからかってみる -「上手い話」じゃなくて「常識」です-」の続きです。 リフレ派の主張って言うのは、「上手い話」じゃなくて、いわば「常識」なのです。プロトタイプな「アンチ・リフレ」発言する人というのは、「常識」…

熱帯夜、「アンチ・リフレ派」をからかってみる -「上手い話」じゃなくて「常識」です- (追記あり)

以前、リフレ派に対する反論などに対して、反批判(の紹介)を行いました。しかし、世の中には、まだまだ「アンチ・リフレ派」がいらっしゃるようです。典型的(プロトタイプ)な反論が寄せられている様なので、本の紹介なども含めて、書いてみようと思いま…

多数代表制と比例代表制 -ついでにバジョット /加藤秀治郎『日本の選挙』を読む(2)

さて前回、中選挙区制について説明しました。 ちなみにこの制度、実質的に山県有朋がスタートさせたものです。原敬が一時期小選挙区制に戻したものの、すぐに護憲三派内閣が中選挙区制という形で、戻します(p36、37)。大選挙区と小選挙区での間を取る…

佐藤優の「明石作戦」擁護 に対する疑問  /稲葉千晴『明石工作』について

これが、ガセであることを祈りましょう。とあるところからのコピペ。 藤原: 明石の工作は実は効果がなかったとしている本が日本でも出ましたよね。あれは信頼できるんですか。 佐藤: 私はあまり信頼していません。明石の行動記録についてはロシアですでに…

意外な中国外交の側面 -川島真,編『中国の外交 自己認識と課題』

中国という国は、どんな外交をやっているのか。最近はアフリカでの外交のことがよく話題に上がるようです。 それを学ぶのに、川島真,編『中国の外交 自己認識と課題』はお勧めです。日本の第一線の研究者が、論文を書いていますし、興味あるテーマからお読み…

消費税問題もいいけど、参院改革もね 加藤秀治郎『日本の選挙』を読む(1)

またもや国会がねじれてしまったわけですが、さて、どうしましょう。もう消費税とか以前の問題です。 そもそも、日本の議会制度自体おかしい、と思った方も多いのでは。確かに、改善すべきところ、山ほどあります。加藤秀治郎『日本の選挙 何を変えれば政治…

小川紳介に学ぶ、「プロ」であるということ -"無いなら自分で作ること"について-

『小川紳介 (名古屋シネマテーク叢書)』によると、上野英信は次のように述べているらしい。革命論より前に、電気の簡単な配線が直せるとか、井戸のポンプのバルブをどう変えたらいいかとか、そういうことを勉強せよ、と。 上野は、『追われゆく坑夫たち』、…

中谷宇吉郎とラッセル /核兵器と反共主義の関係

氏は当時、アメリカに滞在していたが、その文は「ちえのない人々−−ビキニ被災をアメリカでみて」と題されていた。アメリカ政府が第五福竜丸の船員に、すぐ、たくさんの見舞金を出し、船も即刻買いとってしまえば、日米おたがいによいのではないか、ことをお…

「唯一の被爆国」というナショナリズムについて 【短評】

前回、高田純『核爆発災害』を紹介しました。ですので今回も、「被爆」という問題について、書きたいと思います。 「日本は唯一の被爆国」との表現に対して、次のような反論があります(注1)。 「世界で初めて原爆の犠牲になったのは、史上初の原爆実験に…

ミサイル防衛よりも、やはり地下室・シェルター? 高田純『核爆発災害』を読む

高田純『核爆発災害 そのとき何が起こるのか』は、核爆発とその被害の実情について教えてくれます。 例えば、核兵器の衝撃波は、伏せることで、大幅にこの種の危険から逃れることができるといいます(6頁)。爆心からの距離などにもよるが、核兵器の衝撃波…

「国際人」と「独特なナショナリズム」 /とある保守派への平凡な反論 【短評】

ヒッチハイクをやり、皿洗いや掃除をやりながら、無国籍人として生きたから、一人前に生きた、国際人として生きたといえるのか。埒外者として、乞食として生きのびるだけなら、アメリカであろうがイギリスであろうが、いささかの厚顔ささえあれば、なんの人…

フィリピン・ミスチーフ礁と米軍基地問題 -海兵隊がいなくても島は取られないかも- 【短評】

普天間基地問題において、よく聞くのが、【普天間基地が撤退したら、日本は中国に領土である島嶼を占領されてしまう】というものです。 もちろん論者によってニュアンスは違うのですが、その際よく持ち出されるのは、「ミスチーフ環礁」の件です。要するに、…

「孝」による側室制度の正当化は現代でも可能か? 【短評】

古田博司『東アジアの思想風景』によると、「白居易は、家では妓女をたくわえて遊んでいた」らしい(41頁)。農民の貧困や王朝の腐敗を絶句に託して政治批判をする一方、このようなことも行っていたようです。あらま。同じ振る舞いは、かの王献之も同じで…

イスラム武装勢力を刺激しない米軍の駐留方法(を勝手に考える) 【短評】

加藤朗『テロ 現代暴力論 (中公新書)』によると、84年のベイルートからの米軍撤退は、テロが原因でしたが、このテロにはシリアの関与が疑われたそうです(36頁)。 ベイルートから米軍が撤退して、やっと中近東から米軍は去った。しかし、アフガンにソ連…

改憲問題について -花咲く増税論争の影に in 参議院選挙2010 【短評】

今度の参議院選挙では、争点の中心は、「増税」であり、特に消費税が中心のようです。これについては、既に巷間で行き渡っていることです。まあ、増税問題については別途何か書きたいと考えております。 一方で、なっておかしくないのに、ほとんど争点になら…

パスカルを使った、ノルマリアンによる悪戯 【短評】

阿部良雄『若いヨーロッパ―パリ留学記』を読むと、こんなエピソードがあります。こんな感じです。 副校長でパスカル研究の大家プリジャン氏の住居の出口にバリケードを築いて、「われわれの不幸のほとんどすべては、自分の部屋にじっとしていられなかったこ…