2011-09-01から1ヶ月間の記事一覧

反「教祖」・反「男性中心主義」・反「起源」としてのゴダール -ゴダールの贅沢さについて- 蓮實重彦『ゴダール革命』

『ゴダール革命』を読む。 一部の文章は既にネットにアップされているため、ネット上にあるものは、それを用いるものとする。 以下、「ゴダールの孤独」の章より リチャード・バートンとシルヴィー・ヴァルタンを主演に迎えるという当初のアイディアに固執し…

「おそるべき君等の乳房夏来る」(西東三鬼)を公の文章に引用した憲法学者は、多分著者が最初。 長谷部恭男『憲法のimagination』(後編)

再び『憲法のimagination』を読む。 ルソーは、戦争とは相手の国の社会契約に対する攻撃であり、根本的なレベルで大戦争にいたる国家間の対立を終結させるためには、社会契約自体を変更する必要がある、と述べた(175頁)。 で、戦前日本の憲法だと天皇主…

東京大学 -ボクと言語と、時々、大森荘蔵- (憲法学から少し離れて) 長谷部恭男『憲法のimagination』を読む(前編)

長谷部恭男『憲法のimagination』を読む。 著者のユーモア(芸?)も混じえつつ、著者の憲法観が早分かりできる(?)好著だ。 著者の学問的(及び非学問的)興味は広く面白く、そこも見所。 「配偶者」さん(も学者。)とのやり取りも面白い。 憲法は、公務…

今まで言わなかったけど、中島敦『山月記』の漢詩に出て来る「長嘯」は、「詩を吟じる」って意味じゃないんだ 齋藤希史『漢文スタイル』(後編)

またも、齋藤希史『漢文スタイル』 を読む。漢文スタイル作者: 齋藤希史出版社/メーカー: 羽鳥書店発売日: 2010/04/13メディア: 単行本 クリック: 32回この商品を含むブログ (10件) を見る 著者曰く、今の時代に必要なのって、韓愈じゃなくて、焚紹述樊紹述…

「士大夫」という非ナショナリズム性、そして他者から「見られる」ことから生まれたナショナリズム -ついでに『敗戦後論』について少し- 齋藤希史『漢文スタイル』(中編)

齋藤希史『漢文スタイル』を再び読む。 なぜ、著者は、「漢文脈」にこだわるのか(「漢文脈」って何?ってひとはググってね)。 幕末・明治期の人、竹添井井『桟雲峡雨日記』(中国・蜀地方に滞在していた時の日記)に言及して著者は言う。 彼の記述の中には…

「正解はひとつじゃない」、という漢詩の訓読に対する教訓 -あと、謝霊運について少し- 齋藤希史『漢文スタイル』(前編)

齋藤希史『漢文スタイル』を読む。 記事の中に、重複する箇所がいくつもあるけど、それを差し引いても実に面白い。 中国における隠者たち、隠遁して政治の舞台から隠れて生きる人々。 陶淵明とか、想像するとわかりやすいと思う。 この隠者たちは、前代の隠…

詩作ならまず辞書引けとはいうけれど辞書ない時代はどう作ったのよ -なぜ短歌なのか、短歌の何がいいのか- 穂村弘『短歌という爆弾』・雑感

穂村弘『短歌という爆弾』を読む。 俵万智の歌。 砂浜に二人で埋めた飛行機の折れた翼を忘れないでね この歌のポイントは、桜貝とかじゃなくて、「飛行機の折れた翼」を選択したことにある(117頁)。 読者は、自分の体験とかけ離れた一撃を通過すること…

復興費用と消費税に関するどうでもいい話(未完) -猪木武徳先生の議論について-

猪木武徳先生が、復興費用の調達のため、消費税の臨時増税も検討しているらしい。 で、今月の『中央公論』で、自らに寄せられた反論に対して、反批判をしている(猪木武徳「デモクラシーの病が経済を混乱させる」)。 普通に考えると、日銀引き受けでも問題…

「歴史小説を書きたいなら優秀な専門家に御指導いただきましょう」的な話 -佐藤亜紀『小説のストラテジー』を読む(後編)-

三たび、佐藤亜紀『小説のストラテジー』を読む。 西欧において、回想録はどのような意味を持つか。 それは自分の事跡を後世の歴史に残すためであり、彼らは日記でさえも、それを目的に綴っている(179頁)。 回想録と言うのは、見て欲しい自分を描くため…

フィクションという、実にアンチ・プラトン(哲学?)的なもの。あるいは、ミメーシスVSディエゲーシスの問題 -佐藤亜紀『小説のストラテジー』を読む(中編)-

再び、佐藤亜紀『小説のストラテジー』を読む。 著者曰く、必然性のない店の名前や商標は、小説の古典的な技法では確かに避けるべきものだとされているけど、もし、小説の中でお茶をするのにスタバでもケンタでもなくドトールに行く必然性が、読み手にもはっ…

確かに、ドストエフスキー作品は、インテリ文学じゃなくて、メロドラマそのものですよね。 -佐藤亜紀『小説のストラテジー』(前編)-

佐藤亜紀『小説のストラテジー』を詠む。 深層の「意味」の誘惑を拒み、あくまでも表層にとどまり溺死せよ、とのテーゼは、とっても正統派(24頁)。 何だか、蓮實重彦に近い気がする。 オスカー・ワイルドは、批評家の意見が一致しない時、作家は自分自身…

短歌などまるで詠む気は無いけれど「尾崎かまち」は自殺ですよね -枡野浩一『かんたん短歌の作り方』を読む-

枡野浩一『かんたん短歌の作り方』を読む。 一見不真面目な著者だが、実は歌への姿勢は真摯であり、真面目。 句読点をつけると、どんな退屈な言葉だって一見意味ありげに見えちゃうんです。それは危険なワナ。記号なんか全部捨てても通用するような強い言葉…