2020-01-01から1年間の記事一覧

新約聖書における、「救済」と「自責」に関する一考察(ってほどでもない) -田川建三『宗教批判をめぐる』を読む-

田川建三『宗教批判をめぐる 宗教とは何か〈上〉』を読んだ。 宗教批判をめぐる―宗教とは何か〈上〉 (洋泉社MC新書) 作者:田川 建三 出版社/メーカー: 洋泉社 発売日: 2006/05 メディア: 新書 内容は紹介文のとおり、 人間はなぜ宗教を生み出し維持してしま…

確かにこんな哲人王はヒトラーには無理。あと「高貴な嘘」について -斎藤忍随、後藤明生『「対話」はいつ、どこででも』を読む-

斎藤忍随、後藤明生『「対話」はいつ、どこででも』を読んだ。 「対話」はいつ、どこででも―プラトン講義 (1984年) (Lecture books) 作者: 斎藤忍随,後藤明生 出版社/メーカー: 朝日出版社 発売日: 1984/12 メディア: ? この商品を含むブログを見る 内容は、…

拝観制限がされると人気が下がる、開放されると人気が出る、というシンプルなメカニズム -井上章一『つくられた桂離宮神話』を読む-

井上章一『つくられた桂離宮神話』 (講談社学術文庫) を読んだ。(というか再読) つくられた桂離宮神話 (講談社学術文庫) 作者: 井上章一 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 1997/01/10 メディア: 文庫 購入: 5人 クリック: 51回 この商品を含むブログ (33件…

冷戦において利用されかねない内容だったパル判決について -中里成章『パル判事』を読む-

中里成章『パル判事 インド・ナショナリズムと東京裁判』を読んだ。 パル判事――インド・ナショナリズムと東京裁判 (岩波新書) 作者: 中里成章 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2011/02/19 メディア: 新書 クリック: 25回 この商品を含むブログ (8件) を見…

性教育は市民教育であり、その国の市民社会の成熟度を測る重要なバロメータ -橋本紀子 (監)『こんなに違う!世界の性教育』を読む-

橋本紀子 (監)『こんなに違う!世界の性教育』を読んだ。 こんなに違う!世界の性教育 (メディアファクトリー新書) 作者: 橋本紀子 出版社/メーカー: メディアファクトリー 発売日: 2011/04/28 メディア: 新書 購入: 1人 クリック: 58回 この商品を含むブロ…

星岡茶寮においては、牛肉のすき焼きは提供されなかった、ということらしい。 -『魯山人と星岡茶寮の料理』を読む-

『魯山人と星岡茶寮の料理』(柴田書店)を読んだ。 魯山人と星岡茶寮の料理 作者: 柴田書店 出版社/メーカー: 柴田書店 発売日: 2011/12/14 メディア: 単行本(ソフトカバー) クリック: 4回 この商品を含むブログを見る 内容は、おおざっぱにいうと、解説…

まさしく、「渡辺裕の研究のおいしいところだけ載せた感じ」かな。 -渡辺裕『考える耳 記憶の場、批評の眼』を読む-

渡辺裕『考える耳 記憶の場、批評の眼』を読んだ。 考える耳 記憶の場、批評の眼 作者: 渡辺裕 出版社/メーカー: 春秋社 発売日: 2007/04/19 メディア: 単行本 クリック: 1回 この商品を含むブログ (7件) を見る 内容は、紹介文に、「超『音楽時評』。しなや…

やはり、「戦争は飯をまずくする(物理)」というような話。 -斎藤美奈子『戦下のレシピ』を読む-

斎藤美奈子『戦下のレシピ 太平洋戦争下の食を知る』(のオリジナル版)を読んだ。 (サムネイルは、現代文庫版だが。) *1 戦下のレシピ――太平洋戦争下の食を知る (岩波現代文庫) 作者: 斎藤美奈子 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2015/07/16 メディア:…

若干タイトル詐欺気味な感じだが、スタインウェイの良さはよくわかる -髙木裕『今のピアノでショパンは弾けない』を読む-

髙木裕『今のピアノでショパンは弾けない』を読んだ。 今のピアノでショパンは弾けない 日経プレミアシリーズ 作者: ?木裕 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社 発売日: 2013/06/18 メディア: 新書 この商品を含むブログ (2件) を見る 内容は紹介文の通り、…

「スシ」を巡って、「寿司」に対する固定観念を剥がしていく良書 -玉村豊男『回転スシ世界一周』を読む-

玉村豊男『回転スシ世界一周』*1を読んだ。 回転スシ世界一周 (光文社知恵の森文庫) 作者: 玉村豊男 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2017/10/27 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 内容は、「米は野菜? インターネットでスシ修行? オシボリ…

日本美術は中国美術から何を学び、何を学ばずに独自の道を歩んだか、という話(主に後者) -戸田禎佑『日本美術の見方』を読む-

戸田禎佑『日本美術の見方 中国との比較による』を読んだ。 日本美術の見方―中国との比較による 作者: 戸田禎佑 出版社/メーカー: 角川書店 発売日: 1997/02 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 内容は、紹介文の通り、「日本の美術が中国の周辺地…

近代的「性欲」の誕生(ともあれ、一語の辞典シリーズは、今後も読み継がれるべきである。) -小田亮『性 (一語の辞典)』を読む-

小田亮『性 (一語の辞典)』を読んだ。 性 (一語の辞典) 作者: 小田亮 出版社/メーカー: 三省堂 発売日: 1995/12 メディア: 単行本 クリック: 2回 この商品を含むブログ (1件) を見る 内容は、「20世紀最大のテーマの一つ『性』。男女の性愛を表す『性』とい…

大人げない諸国家の中で、国益を「合理的」に追及するということ -宮下豊『ハンス・J・モーゲンソーの国際政治思想』を読む-

宮下豊『ハンス・J・モーゲンソーの国際政治思想』を読んだ。 ハンス・J・モーゲンソーの国際政治思想 作者: 宮下豊 出版社/メーカー: 大学教育出版 発売日: 2012/12/20 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 内容は紹介文のとおり、「ハンス・J・モ…

植物の武器(タンニン、カプサイシン)も平気で摂取する人間 -稲垣栄洋『たたかう植物』を読む-

稲垣栄洋『たたかう植物: 仁義なき生存戦略』を読んだ。 たたかう植物: 仁義なき生存戦略 (ちくま新書) 作者: 稲垣栄洋 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2015/08/05 メディア: 新書 この商品を含むブログ (5件) を見る 内容は、紹介文の通り、 じっと動か…

「アジアのルソー」は本当にラディカルな人だった(天罰論批判とか。) -戸崎哲彦『柳宗元 アジアのルソー』を読む-

戸崎哲彦『柳宗元 アジアのルソー』を読んだ。 柳宗元: アジアのルソー (世界史リブレット 人) 作者: 戸崎哲彦 出版社/メーカー: 山川出版社 発売日: 2018/01/17 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 内容は紹介文にある通り、「中国唐代の思想家柳…

ウォール・オブ・サウンドの録り方、あと、録音マイクの「距離」などについて -中村公輔『ロックのウラ教科書』を読む-

中村公輔『ロックのウラ教科書』を読んだ。 名盤レコーディングから読み解くロックのウラ教科書 The Stories behind The Great Recordings 作者: 中村公輔 出版社/メーカー: リットーミュージック 発売日: 2018/06/14 メディア: Kindle版 この商品を含むブロ…

利休は何がすごかったのか、そして織部には何が継承されたか -矢部良明『古田織部の正体』を読む-

矢部良明『古田織部の正体』を読んだ。 古田織部の正体 (角川ソフィア文庫) 作者: 矢部良明 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川学芸出版 発売日: 2014/08/23 メディア: 文庫 この商品を含むブログを見る 内容は、紹介文にある通り「千利休亡きあと茶の湯の天下…

「軍人輩の為すことほど勝手次第なるはなし」と、荷風は書いた。 -三谷太一郎『人は時代といかに向き合うか』を読む-

三谷太一郎『人は時代といかに向き合うか』を読んだ。 人は時代といかに向き合うか 作者: 三谷太一郎 出版社/メーカー: 東京大学出版会 発売日: 2014/06/20 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る 内容は紹介文にある通り、 近代日本の形成に…

「千島のおくも おきなわも 八洲のうちの まもりなり」、近代日本の帝国主義と「蛍の光」 -伊藤公雄ほか『唱歌の社会史』を読む-

伊藤公雄ほか『唱歌の社会史』を読んだ。 唱歌の社会史: なつかしさとあやうさと 作者: 伊藤公雄,河津聖恵,中西光雄,永澄憲史,山室信一,佐久間順平,中西圭三,野田淳子 出版社/メーカー: メディアイランド 発売日: 2018/06/20 メディア: 単行本 この商品を含…

結局のところ「聖徳太子」って何がスゴかったのか、というような話。 -東野治之『遣唐使』&『聖徳太子』を読む-

東野治之著『遣唐使』と『聖徳太子』を読んだ。(厳密には再読なのだが) 遣唐使 (岩波新書) 作者: 東野治之 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2007/11/20 メディア: 新書 クリック: 16回 この商品を含むブログ (12件) を見る 聖徳太子――ほんとうの姿を求…

入江泰吉とビニール鹿の関係、それから、古都税の顛末、ついでに信仰について。 -碧海寿広『仏像と日本人 宗教と美の近現代』を読む-

碧海寿広『仏像と日本人-宗教と美の近現代』を読んだ。 仏像と日本人-宗教と美の近現代 (中公新書) 作者: 碧海寿広 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 2018/07/18 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る 内容は紹介文にある通り、 明治初期に吹き…

室町時代を知るならこの本(*この書評では「当座会」については言及しないことにする。) -桜井英治『室町人の精神』を読む-

桜井英治『室町人の精神』(オリジナル版)を読んだ(厳密には再読)。 室町人の精神 (日本の歴史) 作者: 桜井英治 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2001/10/05 メディア: 単行本 購入: 2人 クリック: 3回 この商品を含むブログ (5件) を見る 内容は、紹介…

政治に失望する前に、立法府を活性化させるためにできること -大山礼子『日本の国会』を読む-

大山礼子『日本の国会』を再読。 日本の国会――審議する立法府へ (岩波新書) 作者: 大山礼子 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2011/01/21 メディア: 新書 購入: 1人 クリック: 44回 この商品を含むブログ (27件) を見る 「政党間の駆け引きに終始し、実質…

「ジャポニスム」と「日本『美術』」との間にあったギャップ -稲賀繁美『日本美術史の近代とその外部』を読む-

稲賀繁美『日本美術史の近代とその外部』を読んだ。 日本美術史の近代とその外部 (放送大学教材) 作者: 稲賀繁美 出版社/メーカー: 放送大学教育振興会 発売日: 2018/03/01 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (3件) を見る 放送大学のテキストである。 …

「アメリカは、古都ゆえに空襲もしなかったのか? そんなことはない」 -中西宏次『戦争のなかの京都』を読む-

中西宏次『戦争のなかの京都』を読んだ。 戦争のなかの京都 (岩波ジュニア新書) 作者: 中西宏次 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2009/12/18 メディア: 新書 購入: 5人 クリック: 45回 この商品を含むブログ (4件) を見る 内容は、紹介文の通り、「アメリ…

この本を読めば禅が大体わかるという本。あと道元スゴい。 -小川隆『禅思想史講義』を読む-

小川隆『禅思想史講義』を読んだ。 禅思想史講義 作者: 小川隆 出版社/メーカー: 春秋社 発売日: 2015/07/16 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (4件) を見る 内容は紹介文にある通り、「禅者は、なにを、どう考えてきたか。禅の興起から二十世紀の鈴木…