外交・国際関係

「人道的介入」の「人道」の部分を、もっとちゃんと考えろ、っていう話。 -最上敏樹『人道的介入』を読む-

最上敏樹『人道的介入 正義の武力行使はあるか』を読む。 まったく古びていない。 それくらい、すぐれた書物ということなのか。 はたまた、世の中が進歩もせずに停滞しているだけなのか。 「人道的介入」を含め、あらゆる国内外における「武力行使」を考える…

安全保障論の根本、それは「不安」である、という話なんでしょうな。 - 土山実男『安全保障の国際政治学 焦りと傲り』を読む

土山実男『安全保障の国際政治学―焦りと傲り』を読む。 安全保障論の良本である。 amazonの書評が丁寧なので、ぜひ目を通しておくこと。 最低限、「第1章 はじめにツキュディデスありき―国際政治の焦りと傲り」は読んでおくこと。 古代ギリシア時代の古典も…

「傲慢さが垣間見えると、足元をすくわれかねない」と大臣は言った -松本龍『環境外交の舞台裏』を読む-

松本龍・著(日経BP環境経営フォーラム・編)『環境外交の舞台裏』を読む。 著者は、就任から2日間で生物多様性やCOP10の資料を買い込んで勉強し、「下手な英語」のスピーチの練習をしたという(4頁)。 本書に書いてあるけど、決して環境に対する意識…

豊下楢彦『集団的自衛権とは何か』は、なぜ「集団的自衛権」以外に頁の大半を割くことになったか -あるAmazon評を読んで-

■はじめに■ 今回踏み台(←失礼)となる文章はこれです。■集団的自衛権と憲法とコスト■現在の「集団的自衛権を行使しない」と解釈してきたことを説明するものの、なぜ保有すれども行使せずと解釈してきたかについては全く説明されない。 本書をよく読みましょ…

小論:江畑先生と斬首戦略、について -普天間基地の問題-

■前段■ 某掲示板の記事のコメ欄の方で、なぜか、拙記事へリンクが張られていました。どうやら、故・江畑謙介氏の普天間基地問題への言及ということで、取り上げられたようです。本当の出典元は、「軍事板常見問題&良レス回収機構」様なのですが。 詳細は、…

意外な中国外交の側面 -川島真,編『中国の外交 自己認識と課題』

中国という国は、どんな外交をやっているのか。最近はアフリカでの外交のことがよく話題に上がるようです。 それを学ぶのに、川島真,編『中国の外交 自己認識と課題』はお勧めです。日本の第一線の研究者が、論文を書いていますし、興味あるテーマからお読み…

フィリピン・ミスチーフ礁と米軍基地問題 -海兵隊がいなくても島は取られないかも- 【短評】

普天間基地問題において、よく聞くのが、【普天間基地が撤退したら、日本は中国に領土である島嶼を占領されてしまう】というものです。 もちろん論者によってニュアンスは違うのですが、その際よく持ち出されるのは、「ミスチーフ環礁」の件です。要するに、…

イスラム武装勢力を刺激しない米軍の駐留方法(を勝手に考える) 【短評】

加藤朗『テロ 現代暴力論 (中公新書)』によると、84年のベイルートからの米軍撤退は、テロが原因でしたが、このテロにはシリアの関与が疑われたそうです(36頁)。 ベイルートから米軍が撤退して、やっと中近東から米軍は去った。しかし、アフガンにソ連…

仮説的に、九州への代替基地移設の可能性を考える /普天間問題と斬首戦略について

■これまでの斬首戦略に関する拙論のおさらい■ ・ソ連による、アフガンのアミン大統領暗殺作戦は、台湾での斬首戦略の参考にはなりません。 ・台湾側の軍事指揮権について、総統継承順位の法的整備のことは、念頭にありますか? ・海兵隊だけでなく、台湾の部…

「米国海兵隊の台湾派遣を法的に義務付けさせよ」という反論 小川和久『ヤマトンチュの大罪』(3)

■斬首戦略の現実性と、台湾国内で法的手続きの問題■ 「沖縄海兵隊の戦闘部隊、米「移転困難」 (2005年6月30日 読売新聞)米側の説明は今春、日米の外務・防衛当局の審議官級協議などで伝えられた。それによると、中台有事のシナリオとして、中国軍が特殊部…

アフガンでの「斬首戦略」は、台湾版には使えない?(追記あり) 小川和久『ヤマトンチュの大罪』(2)

■斬首戦略とは何か■ 「中台有事のシナリオとして、中国軍が特殊部隊だけを派遣して台湾の政権中枢を制圧し、親中政権を樹立して台湾を支配下に収めることを想定。親中政権が台湾全土を完全に掌握するまでの数日間に、在沖縄海兵隊を台湾に急派し、中国による…

海兵隊「即応後方配備」の行方 1996〜2010 -普天間基地問題の解決案について- 小川和久『ヤマトンチュの大罪』(1)

・小川和久『ヤマトンチュの大罪 日米安保の死角を撃つ!!』小学館 (1996/02)■1996年の普天間基地問題解決案■ 海兵隊の部隊を、基地は現在のレベルで維持したまま部隊だけをアメリカの領域に戻し、日本の周辺で緊張状態が生じる可能性が出てきたときのみ沖縄…

スルタンガリエフと第三世界の知識人 山内昌之『スルタンガリエフの夢』(1)

・山内昌之『スルタンガリエフの夢 イスラム世界とロシア革命』岩波書店 (2009/1)■スルタンガリエフと第三世界の知識人■ スルタンガリエフは、ロシア共産党の同志との論争を通して、「中心」における社会主義・労働運動にしばしば見えかくれする「植民地社会…

本当の湾岸戦争の教訓、及び日本の対イスラエル政策 豊下楢彦『集団的自衛権とは何か』(3)

■【敵の敵は味方】という論理が招いた、【悪の枢軸】の存在■ レーガン政権は、イラクがイランに対してばかりではなく、国内のクルド人に対しても化学兵器を使用しているという確かな情報をつかんでいたのである。(中略)しかしレーガン政権は、(中略)イラ…

ミサイル防衛を考える際の3つの前提 豊下楢彦『集団的自衛権とは何か』(2)

■ミサイル防衛を考える際の3つの前提■ 迎撃できる可能性はきわめて小さく、たとえ迎撃に「成功」したとしても、日本の国土で核爆発が起こるか、広範な核汚染にみまわれるのである。 (129頁) ノドンに核弾頭が搭載されていたら、という最悪の仮定での話…

日米関係における「血を流す」というレトリック 豊下楢彦『集団的自衛権とは何か』(1)

・豊下楢彦『集団的自衛権とは何か』岩波書店 (2007/07)■気を回しすぎた日本、リアリスティックな米国■ 日本の政府や外務省が、日本の側から米国に沖縄の返還を求めるならば「米国の感情を害するであろう」とか、「米国の反発を招くであろう」と逡巡している…

グローバル化におけるヒト・モノ・カネの流れのズレ 土佐弘之『アナーキカル・ガヴァナンス』

・土佐弘之『アナーキカル・ガヴァナンス 批判的国際関係論の新展開』御茶の水書房 (2006) 【異なるはずの二つのものの、補完と結託】とでもいうべき現今の世界のありようを論じている、と本書を要約することができるでしょうか。「2008-03-31」の記事にて、…