外国人犯罪「凶悪化」はほんとうか 番外編(2)草野厚『政権交代の法則』

■「凶悪化」の実態■
 「特に凶悪犯罪等が犯罪白書で問題視されている」という風にWikipediaでは言われています。実際どうなんでしょう。
 過去データですが、警察庁統計の中の「来日外国人犯罪の検挙状況(平成16年)」によると、平成12年から16年まで、「全凶悪犯検挙人員に占める来日外国人凶悪犯検挙人員の比率は、ここ数年4%台後半から5%台半ばで推移していて、来日外国人の凶悪事件だけが突出して増加しているとはいえない」のです(「外国人犯罪は増加したか? イメージの拡散」『かわもと文庫』様)。また、

「来日外国人」による凶悪事件の増加とは、ほとんどが強盗事件の増加だといえるが、凶悪犯罪全体をみてもやはり強盗の比率が55%と突出しており、ここでも全強盗検挙人員と来日外国人のそれとはある程度の連動を示している。

とも(同上頁)。来日外国人の凶悪強盗事件の増加云々の「お話」の実態はこんなもののようです。少なくとも、平成12年から16年までは、そんな事実は見受けられません。
 ちなみに「警察庁のデータ」をみれば、平成11年から15年まで、「来日外国人の凶悪犯罪のなかで、不法滞在者のそれが増えているという事実もない。」のです(同上頁)。
 「「外国人犯罪増加・凶悪化」のウソ 」における図も参照してください。93年から06年にかけての、「一般刑法犯検挙人員における来日外国人の推移」です。グラフにすれば、こんな様子です。なんですか、この差は。

■「外国人犯罪」の実態について■
 では、外国人犯罪の「凶悪化」は実際のところ事実なのでしょうか。
 浜井浩一氏の論考「日本の治安を脅かす外国人犯罪の実態」を見てみましょう。孫引きで、「治安悪化論争?っていうかなんていうか・・・」(『女子リベ  安原宏美--編集者のブログ』様)を参照すると、
 「来日外国人による殺人及び強盗の検挙人員」は、「どちらも1990年以降上昇傾向にある」。しかし、「殺人の総検挙人員、強盗の総検挙人員の中で見ると」、強盗犯の場合、総検挙人員の上がり方が、来日外国人による検挙人員の比ではありません。言い訳しようのないくらい、「日本人」の強盗犯の方が増えています(もちろん、この時の「強盗犯」の定義に注意が必要ですが)。
 殺人の場合でも、その上下自体は対応を見せていませんが、やっぱり総検挙人員の方は、「日本人」の方がはるかに上です。殺人の場合、総検挙人員が80年代後半に下がり、92年ごろからまた少し上昇していますし、それとは別の動きとして、来日外国人の検挙人員は、98年に少し上がっていますが、また元に戻っています。
 では、来日外国人の犯罪の実態は、どのようなものか(同上頁)。

かれらの多くは、不法入国を斡旋する蛇頭に200万円以上の借金をして日本に不法入国している。刑務所で得られる作業賞預金は、月平均4000円程度であることを考えると、とても割りにあうものではない。また、彼ら不法入国者は、いつでも国外に逃亡できるように考えている人も多いが、蛇頭は、入国の面倒しか見てくれない。中国系の不法在留者が帰国するためには入国管理局に出頭するしかない。

随分、想像と違っています。むしろ恐ろしいのは「蛇頭」の組織の論理の方です。がんばって取り締まってください、といっておきましょう。

(続く)