ミサイル防衛よりも、やはり地下室・シェルター? 高田純『核爆発災害』を読む

 高田純『核爆発災害 そのとき何が起こるのか』は、核爆発とその被害の実情について教えてくれます。
 例えば、核兵器の衝撃波は、伏せることで、大幅にこの種の危険から逃れることができるといいます(6頁)。爆心からの距離などにもよるが、核兵器の衝撃波から、逃れられる可能性が増える、と。とすれば、映画などで爆発の衝撃に対して伏せる場面がありますが、これはやはり有効なのかもしれません。
 さらに、広島の原爆において、地下室や堅牢なコンクリート建造物内で伏せていれば、大幅に生存率を高められることが生存者の調査から判明したそうです(49頁)。 原爆に限らず、ミサイル全般で、地下室やシェルターなどにいれば生存率が上がります。このことは、湾岸戦争イラクから放たれたミサイルに対しても、ほとんど死者を出すことが無かったイスラエルの事例を見れば分ります。たしかどこかで田岡元帥が、ミサイル防衛に大金をかけるより、建物に地下室を作らせるような政策を採ったほうが、平時には通常の地下室として、非常時にはミサイルや爆撃からの避難所として使えて無駄が無いので、こちらを採用した方がよい、という旨のことを書いていました。

 あと、二一世紀の世界の脅威は、大型核兵器を撃ち合う全面戦争ではなく、小型や中型の核兵器による局地戦争にあるといわれている、と著者は指摘しています(iii頁)。藤原帰一『「正しい戦争」は本当にあるのか』にもその話は、出ていました。
 原発は、その使用する「燃料」の濃縮度の低さゆえに、核爆発はしない、という話(爆発しない、というだけですが)もでてきます。1メガトン級の核爆発が米国上空300kmで生じた場合、全米が電磁パルスの影響を受けると予想されている、という電子機器への被害予測も、興味深いです。
 ちなみに著者曰く、事実上1000km以内で発射された弾道ミサイルの迎撃は大変困難。隣国の核ミサイルを発射されたら、迎撃不能だ、という考えのようです(234頁)。

 著者の核汚染対策は、フランスの事例に倣うもののようです。フランスに倣い、核事故・核災害に対応できる除染棟を地域ごとに管轄を決めて建設し、運用する。そして、自衛隊病院の民間開放を進めて整備する、というものです(262頁)。核兵器による政治的自立を掲げるド・ゴール主義の流れを受けてか、フランスでは核に対する対策がきちんと取られているようです。日本核武装論者の人は、まず、こういうディテールを大切にしましょうね。そして、建物の地下階建設の政策的推進も忘れずに。