とある戦後の畜産業。そして食料自給率は低下 -日中の農家の利害をめぐって-

■「食料自給率」?その前に「エネルギー自給率」だろw■
 日本における、「食料自給率」という奴のおかしさについては、良く知られている所。
 Wikipediaを読んでみるだけでも、

 飼料自給率の低さ(1980年代以降、20%台で推移。2005年時点で25%)が、畜産製品の自給率に影響を与えている 

とか

 また分子の計算は畜産物については、国産であっても飼料を自給している部分しかカロリーベースの自給率には算入しないこととしている。 

とか書いてあるわけです。
 更に見てみると、「日本を除く海外諸国はカロリーベース総合食料自給率の計算をしていない」とか書いてあるわけです。しかも「現代日本農業では原油が絶対的に必要」であるわけですから、食料自給率が国家防衛のため云々とか言う人もいますが、それ以前にエネルギーに海外依存している以上、こういった言説は無意味(ゴミ)以外の何者でもありません
 農林水産省は、体を張って、エネルギーの海外依存を止めるべきでしょう。
 あ、バイオエタノールに走るのはやめてくださいねw


■戦後農家のサイドビジネス、そして食料自給率が低下。■
 で、今回書いておきたいのは、そもそものお話。
 日本の食料自給率が低下した要因の一つは、高度成長期に、飼料穀物を輸入し始めたことがきっかけでした。
 肉を食べるようになるのは(つまり肉食需要が凄く増えたのは)、戦後からなんです。で、国内農家はその需要に合わせる形で、副業として畜産をやり始めます。しかし、その畜産をするための飼料をどうするのか。
 そこで日本の農家は、飼料を輸入に頼ります。こうして手に入れた飼料で畜産をした農家は、副収入(サイドビジネスです)を得るのでした。
 でもこのとき、誰も食料自給率を心配していないんですよね。まして、農家はこの飼料輸入に反対していないんですよ。農民も、この動きには賛成しておられたのです。
 こうして飼料穀物の輸入量が増えて、食料自給率が下がっていったのであった。何のことはない、当時の国内農家の都合で、今の状況になっているに過ぎません。ヲイヲイ。


■隣国中国の事情、そして分かる、国内農家の利害■
 ちなみに中国の場合、肉は昔から食べておりまして、当然昔から飼料作物を作っていました。とうもろこしとか。
 中国でも経済成長して食肉需要が増えます。しかし、とうもろこしの輸入量が大きく増加することはありませんでした。自給したんです。海外の安いとうもろこしが入ってきたら、国内の農民が困るからです。(これ、日本国のコメと同じ事情ですよね)
 一方で、大豆は輸入しました。中国では、意外にも、当時そんなに大豆育ててなかったんです。

 まとめましょう。国内で生産してなかった作物の場合は輸入で賄う、でも既に生産していた場合は輸入に頼らない、という法則があります。その背景には、国内農家の利害があるのです。(ちなみに、中国の国民の半数以上は未だに農家です。日本とは大きく違うのですね。)
 以上、食料自給率の素敵な経緯でしたw


 参考文献:
 川島博之『農民国家・中国の限界』、170〜171頁辺り


 (追記) 食料自給率については、菅原晃先生の記事「食料自給率のまやかし」もご参照ください。

(終)