これが"当事者研究"というものか!! -『べてるの家の恋愛大研究』について、少し-

 "当事者研究"というものがある。
 Wikipediaでの定義だと、「北海道浦河町にあるべてるの家と浦河赤十字病院精神科ではじまった、主に精神障害当事者やその家族を対象とした、アセスメントとリハビリテーションのプログラム」と言うことになる。
 要は、「幻覚や妄想を含めた当事者が抱える現実(主観的な視点)から、困難や苦労の成り立ちを理解し、そのテーマや当事者のニーズにせまっていく手法」。
 幻覚等を抱える当事者自身が、自らが抱える問題を理解し、その解決策を探り、それらを研究の形で発表する。それによって、周囲の支援も得られやすくなる、というわけだ。 
 (より簡潔な説明は、Wikipediaの「べてるの家」の項目にある。曰く、「メンバー同士で集まり」、「自分の病気にオリジナルの病名をつけて毎日の経過をまとめ、報告する」こと。)
 



 そんな当事者研究だが、『べてるの家の恋愛大研究』だと、こんな切り出され方をすることもある(「研究7」を参照)。
 これはあるカップルの当事者研究で、女性側のコメント。
 「九年ほどつきあってきましたが、いままではケンカに包丁を持ち出したりするほど関係の危機をむかえており、そろそろお互い生きづらくなってきたので、ここらでひとまず研究してみようと思いました。
 なんという "ここらでひとまず" の使い方!!
 しかもこの女性、「イケメンの男性と出会うと、すぐに「ときめきスイッチ」がONになり、彼氏そっちのけで夢中になってしまいます。できれば、いまの彼氏で満足したいと思います。
 なんという "できれば" の使い方!!
 本書で、一番最強のキャラは、間違いなくこの女性である。是非手にとられたい。



 実は、この『べてるの家の恋愛大研究』という本、世の恋愛を小説で書きたいときの種本になるかもしれない。



 正直、途中まで、「障害者でも恋愛だって結婚だって出産だってできる」というふうに書いてこうかなと思ったのだが、「障害者でも」なんていう枠をこの本はとっくに乗り越えているんじゃないか



 2011/5/5 改題及び表現訂正。