猪木武徳先生が、復興費用の調達のため、消費税の臨時増税も検討しているらしい。
で、今月の『中央公論』で、自らに寄せられた反論に対して、反批判をしている(猪木武徳「デモクラシーの病が経済を混乱させる」)。
普通に考えると、日銀引き受けでも問題ないと思うけど、もしこれが政治過程の都合で不可能な場合、国債を市場で消化させて資金調達か、税金で賄わざるを得ない。
一応、リフレ政策には賛成の立場だけど、この場合は、国債か、税金か、の二者択一と考えることにする(善後策だ)。
猪木先生の考えだと、国債の市場での調達だけじゃ、復興費用20兆円が間に合わないから、税金でやるしかない、ということらしい(善後後策)。
で、税金のなかで、何で消費税だけなの?
しかも期限付きの。
曰く、消費税なら広く薄く社会を支えるもので国民の一体感につながるから、ってことらしい。
え?
確かに、著者が『中央公論』で書いているように、今必要なのは有効需要だ。
日銀引受けも買い切りオペもできなくて、国債発行だけじゃ間に合わないなら、税金で復興費用を賄うしかない。
で、民間がデフレで需要がない時には、政府が税金でお金を使うこと自体は、まあ、決して間違っていない。
(まあ、小野善康先生の議論を想起してください。まあ、小野先生の場合、国債発行がスゲー嫌いらしいんだけどねw)
民間が動けないなら、政府が動くしかない、ってのは、一応理にはかなっている。
で、何で消費税だけなの?
なんで、所得税も法人税も上げないの?
(あと相続税も)
問題はそこなんだよね。
猪木先生曰く、
所得税だと、所得や年齢によって払わない人が出ない不平等が発生するし、法人税だと海外との競争力が削がれる云々だってさ。
でも、消費税なら、そのお金で使われる政府の投資とか、民間の投資とかが、消費の減少を相殺するから大丈夫なんだってさ。
何で税金を全部上げようとしないのかな?
例えば、消費税+所得税だって、別に問題ないじゃない。
先生の論法でいえば、別に所得税を増税しない理由にはならないんだよね。
平時だと、所得税も消費税も払ってるんだし、そのことに不満を持つ人っていないはずなんだよね。
これを、今の「非・平時」にやったって、いいじゃない。
あと、法人税の件だけど、日本の内需が回復すれば、それはそれで企業にとっても好都合なんだから、法人税上げたって問題ないと思うよ。
(まさか、消費税増税なら、回りまわって家計の得になるのに、法人税増税は、回りまわっても企業の得になりません、なんて論法ないよねw)
そもそもさ、海外の競争力云々で増税しない理由になるなら、一体感なんでありえるわけないじゃんw
みんなで支払うって語った舌先で、法人は除外するけどね、っていうの、何かおかしいんじゃないかな?
そもそも、この議論の錯誤は、払うことが一体感に繋がるって因果関係なんだよね。
逆なんだよ。
一体感を醸成できたからこそ、増税OKなんだよ。
先生自身、一体感を醸成するのが政治の役割なのよ、って書いてはいるけどさ、消費税だけでそれをやろうってのは、ちょっと論法として無理があるんだよね。
あと、期限付きにするくらいなら、最初から消費税なんて上げるべきじゃないんだよ(詳細は、松尾匡先生の議論を参照してね)。
あとでどーせ、社会保障にそのままつなげようという勢力と、それを阻止しようとする勢力との間で、ひと悶着あるんだから。
そんなくらいだったら、いっそ社会保障を名目に消費税上げた方がずっといいと思うよ(目的税にはしなくていいんだけどね)。
そのことのほうが、ずっと、はるかに、マトモな選択肢だと思う。
(いや、ちゃんと社会保障に使われなかったら、デモや暴動を起こすべきだと思うけどね。)
(未完)
(いただいたブコメについて)
多分このメッセージは、幣ブログへ向けられたものではないと思います(環境税云々には、一切こちらは言及していないので)。hahnela03 消費税を左派系が蛇蝎の如く嫌う不思議。国債=金持ちの金を使いたくない、ソーシャルとは。でも法人税の減税はOKで所得税上げないけど環境税でとるのはOKらしい。環境税は実質キックバックと排出権取引でウマーかな?
ただ、本文だけだと、こちらの税に対する考えが分かりにくいかもしれません。
なので、念の為書いておきませう。
・消費税には、決して反対なわけでは、無論ない(それは、社会保障等の給付としてきちんと還元される限りのこと)。
・復興費用については、できる限り、日銀引き受けとか買切オペとかで賄う。難しい場合は、普通に国債の市場消化での資金調達で賄うべし(百年に一度の大災害というのが事実なら、なおのこと、そうすべき)。
・復興は、国債の分野。社会保障は、税金の分野。
・もし消費税を増税するなら、当然、法人税だって所得税だって相続税だって、増税をためらうべきではない。
・環境税の問題については、知見不足なため、留保。
・日銀引き受けだろうが、非伝統的金融政策だろうが、兎に角あらゆる手を使って、デフレをさっさと脱却しよう。
以上のとおり。