■ケインズと「予想」■
「先生! ラディカル・エコノミストは、ケインズ派は『予想』行動を国民所得理論に有機的に組み入れていないと批判しています。それではケインズ派が『予想』行動を理論化できなかった理由は次の(1)から(4)までのどれでしょう? 」
[…]
「先生。正解はこの中にはありませんよ。だって、ケインズの一般理論は宇野弘蔵が定式化した原理論に相当するから政策論の範疇に入る『予想』行動までは定式化できなかったと『近代経済学の史的展開』の中であんたは自分で言っているんですからね」
■試合は見ない。■
『あのファンたちは応援に熱中してて、試合の方はあまり見ていないようなんだが、ぼくの思いすごしだろうか』
『リッチー。きみの言うとおりさ。誰も試合なんか見ちゃいないよ。試合経過は家に帰ってから「プロ野球ニュース」を見れば分かるのさ。みんな、応援に来てるだけなんだ』 (某書より引用)
■土井淳■
土井淳という名前の転校生が一年のクラスにやって来たが、同級生たちはかれがほんとうは五十三歳だということも、阪神タイガースのヘッド・コーチだったこともまるで気にしなかったのだ。 (某書より引用)
■亡くなった後もなお■
木々の葉はそよりともせず、朝蝉が鳴いていて、はるか下の方から聞こえてくる海の単調な鈍いざわめきが、われわれ人間の行手に待ち受けている安息、永遠の眠りを物語るのだった。はるか下のそのざわめきは、 […] 昔にも鳴り、今も鳴り、そしてわれわれの亡いあとにも、やはり同じく無関心な鈍いざわめきを続けるのであろう。 […] この今も昔も変らぬ響、われわれ誰彼の生き死にはなんの関心もないような響の中に (某書より引用)
■19世紀末ロシアの小説より■
当節では子供たちも中学の勉強がなかなかむずかしくなってとか、しかしどっちかといえばやはり古典教育の方が実科教育よりもすぐれている、というのは中学を出たときどの方面へも道が開けていて、志望によっては医者にもなれ技師にもなれるから、などと述べたてるのだった。 (某書より引用)
■猫■
とろとろと眠りに落ちながら、 […] 涙がつぶった目からあふれて両の頬をつたわり落ちる。そして黒い小猫が彼女の小脇にそい寝をして、しきりにのどを鳴らしている。 (某書より引用)