組織あるあるだが、優秀な技術者ほど根回しみたいな雑事まで大量に集中しちゃって、結果的に有能な技術者がコンセプトを考えるなどの「創造的」な仕事に費やせる時間が少なくなってしまう(52、53頁)。
だから、上司は彼らにのしかかる雑事を減らしてあげる「勇気」が必要になってくる。
この手際が、上司の力量を見る一つのバロメータになる。
著者曰く、1つの課の仕事の8割くらいを一人の人間が処理しているということが、日本の組織ではざらにあるらしい(多分正しい)。
でも、会社のエースの数というのは、どの会社でも限られている。
だから、トップマネジメントで重要なのは、誰が社内のエースかをよく認識し、彼らには本当に重要な仕事しかさせないようにすることだ(137頁)。
いや、難しいんだけどね、これ。
とっても重要なことは、ボトルネックへの意識だ。
例えば、技術者が慢性的に忙しい会社があるとする。まさに、技術サイドがボトルネックになっているわけだ。
そのとき営業サイドが、張り切ってしまうとろくなことにならない(53頁)。
張り切りすぎて、「(自称)会議」とかで技術者たちの時間を奪ってしまったり、仕入れた「顧客情報」を分析もせずに大量に丸投げして手間取らせたりしてしまうからだ。
(もちろん、逆のバージョンもありえるけど。)
営業が頑張れば頑張るほど、研究開発の納期が遅れる。この逆説。
組織あるあるだ。
天下りについて。
良く良く考えれば、何にもしないで役員給与だけもらい続けられるほどの強靭な神経の持ち主なんて、ほとんどいない。
それなりに「自分は役に立っている」という自己認識を求めてしまうものだ。
そう思いたいわけだ。
天下った人間にだって、当然、プライドはある。
人間だもの。
そこで、天下った人間は、自分の貢献が大きいように見せるために、ある行動に出る。
「キツネの権力」を発揮することだ(201頁)。
要は、自分の出身団体の権威を借りて、今の会社とのパイプ役として、しゃしゃり出ようとするわけだ。
私が両者の間に立てばうまくいく、という振舞いをしたがるわけだ(実際はいなくてよいケースもあるのだが)。
自分の出身団体の権威を借りる、まさにキツネ。
こういう振舞いに出た場合、組織はかき回される。
両者のパイプになるどころか、両者の間の障壁になってしまうわけだ。
そいつがいることで、両者の意思疎通は疎外され、マトモな議論もできなくなる。
天下りは、そいつを雇うこと自体のコストよりも、両者の間のジャマになることで発生するコストの方が、長期的には大きい。
(もちろん、天下った奴が有能な場合はまた別だ。)
気をつけたいところですな。