2011-01-01から1年間の記事一覧

【小文】 「市民社会=市民団体」のなかに、「労働組合」は入りますか? -あるいは、東欧革命の解釈をめぐって-

植村邦彦『市民社会とは何か』という良本がある。 マトモな書評は他にもある(そうでないものもあったw)ので、詳細は、そっちを参照された方がいい。 今回は、その一部について。 第八章の中でこういうくだりがある。 曰く、 マイケル・ウォルツァーも、ユル…

「新自由主義的医療改革の本質的ジレンマ」 -医療と経済の常識- 二木立『医療改革』を読む

二木立『医療改革』を読む。 小泉政権における、医療に対する新自由主義的改革がなぜ挫折したのか。 そこには根底的な理由がある。 新自由主義的医療改革を行うと、企業の市場は拡大する一方で、医療費(総医療費と公的医療費の両方)も拡大し、これが医療費…

健康優良児たちは、戦争へ行った -北澤一利『「健康」の日本史』を読む(後編)-

西欧の解剖図。 こういうのは、一般的にたくましく均整のとれた身体が描かれるもの。 これは、特定の人物を標本にしたものではなくて、人間を代表するモデルなのだという(137頁)。 というのは、解剖図における身体は、人の個人差等の要素を完全に取り除…

運動会と、学校という制度に関して -北澤一利『「健康」の日本史』を読む(前編)-

北澤一利『「健康」の日本史』を読む。 『時事小言』での福沢先生の発言。 この時代になると、福沢先生は、信頼できる人種として士族に注目する。 士族は優秀で国のためになるから、という理由で。 んで、それ以外の「百姓町人のやから」は「社会のために衣…

有能な人材は有効に使おうね、の話 -あと、天下りについて- 沼上幹『組織戦略の考え方』を読む

沼上幹『組織戦略の考え方』を読む。 組織あるあるだが、優秀な技術者ほど根回しみたいな雑事まで大量に集中しちゃって、結果的に有能な技術者がコンセプトを考えるなどの「創造的」な仕事に費やせる時間が少なくなってしまう(52、53頁)。 だから、上司…

「ソシアル」をちゃんと知っていた福田徳三(当たり前だが) -市野川容孝『社会』を読んで-

市野川容孝『社会』を読む。 「ナチの優生政策と安楽死計画を、ドイツの一精神科医として批判的に検証してきたK.ドゥルナー」は、その計画にあたった人びとの背後にあった心性を、「死に至る憐れみ」と表現する。 「何て可哀相な人」 「何て気の毒な人」 「…

「ミクロ」に関する解釈はともかく、マクロの方は納得。 -海老原嗣生『学歴の耐えられない軽さ』を読む-

海老原嗣生『学歴の耐えられない軽さ』を読む。 著者は、「企業人となってから生かせるような学問 (略) もし、そういう学問を教えてくれる大学があったなら、社会人になる予定の学生たちも、喜んで勉強をするだろう。その証拠に、企業で即生かせる内容が主…

広電労組に学ぶ、ストライキの正しい方法と今後の労組のあり方 -河西宏祐『路面電車を守った労働組合』を読む

河西宏祐『路面電車を守った労働組合 私鉄広電支部・小原保行と労働者群像』は、全労組の組合員必読の内容といってもよい。 例えば効果的なストの打ち方については、「ストライキは最も効果的な時期をねらってやる。たとえ一時間のストであっても数倍の効果…

黒船は鉄製ではなかった

矢部宏治『本土の人間は知らないが、沖縄の人はみんな知っていること 沖縄・米軍基地観光ガイド』を読んでいたら、「黒船っていうのも、防腐剤として木材にタールをぬっていたから黒かっただけで、鉄製じゃなかった」という記述があった。 意外に知らない人…

社会主義は容認し、民主主義は容認しなかった、「国体」

■ドイツ社民党の国民政党への道■ ドイツ社民党の場合、階級政党から国民政党への方向転換は、1959年のゴーテスベルク綱領で決定的となった。無論、この方針転換をめぐって、その後、党内では議論(たとえば青年組織であるJUSOからの批判)が繰り返され、…

米軍が歪めた戦後沖縄経済

以下、『沖縄「自立」への道を求めて―基地・経済・自治の視点から』からの引用とコメント。 ■沖縄の経済と、国内格差の実態■ たとえば沖縄県の県民所得は、全国で最も低い。しかしその額をドルに換算して先進工業国のリストに並べてみると、中位か下位あたり…

「『ボヴァリー夫人』論』」完成させずにあの世へ行くつもりかw

■渇きは水の欠如ではない。■ 渇きは、沈黙がたんなる言葉の欠如ではないのと同様に水の欠如としてあるのではなく、体内にわずかに残った水分の、声にならない叫びではないのか。 (某書より引用)■古井由吉と、死からの拒絶■ 古井由吉的存在は、死からは拒絶さ…

ウィーンのカフェを生んだ、酷い住宅事情

■ウィーンのカフェを生んだ、酷い住宅事情■ ウィーン郊外のいたるところに貧民窟がひしめいてた。ある記録によると、一八九八年から一九〇二年までの五年間に約四十万の人口増加があったにもかかわらず、十一万四千の住居がふえたにすぎず、しかもその大半は…

歴史的に、メイドさんの人件費は安い。

■五十歳での運転免許取得■ マリーはこの年の秋から前線にレントゲン車を送ることを軍に提案し、自ら先頭に立ってこれを指揮していた […] 彼女はそのために、五十歳近くになってから運転免許を取った (某書より引用)■ブルジョア妻のインテリア■ 十九世紀市民…

褒めはする。でも、金は出さねえ、という態度w

■ポーランドの女子たちの「移動大学」■ マリアは、ポーランドの知識人たちが組織していた、主に女子学生のための"移動大学"という秘密の教育組織で科学を学びます。というのも、ポーランドでは女子が大学入学資格を持てなかったからです。それでも、女子にも…

天皇のリコール権まで入った、憲法草案

■アリスさん「でっかい東北です。」■ 諸外国と比較すると、東北地方の総面積はほぼラトビアやリトアニアの面積に匹敵し、オランダやデンマーク、スイスやボスニア・ヘルツェゴビナよりも広いのです。 (某書より引用)■見た目と違って。■ (引用者注: イザベラ…

体罰が少なかった江戸期において、それでもなお・・・

■権力者の恣意 VS 民衆の恣意 ?■ 江戸時代の法体系こそ「依らしむべし、知らしむべからず」の方針がとられ、刑法はその裏をかく行為が警戒され、この典型で非公開であった (某書より引用) ■親よりも君主優先、な日本国 orz■ 親に対する孝(行)と君に対する…

「教育改革」の問題は、「公務員改革」の問題そのまま orz -苅谷剛彦『教育再生の迷走』を読む-

■教育基本法「改正」が変えてしまったもの■ 最低限の教育の目的を定め、あとは、「あり得べからざる教育」 […] を排除するという考え方から、重要な徳目を加算していく「ポジティブリスト」の発想への転換を意味する。 […] 「あり得べからざる教育」を排除す…

戦前における高齢者虐殺事件の一例

■満州国の新京で逮捕、ケースもありました■ 満州や朝鮮に簡単に逃走する少年がいるのも戦前の特徴で、ほんとにひとつの国でした。 (某書より引用)■戦前の高齢者虐殺事件■ 七七歳の老人である斎藤内大臣にはなんと四七発も撃ち込んでいます。それもすでに何発…

節子、それリスク管理ちゃう、儲け目当ての投機や

■複利効果は大抵、「不平等」を生む(手持ち資金と時間は有限ですので)■ 株式投資は、複利効果によって「ひとり勝ち」を生みやすい (某書より引用)■流動性はいわば、選択権なのですよ■ 将来の経済変化についていろいろな不安があるときには、とにかく、いつで…

スウェーデンがソ連よりも平等、な一例。

■日本にもこういう本が欲しい。■ スウェーデン人が手元に置いて、必要があるたびに読む本が何冊かある。 […] まず『社会ガイド』(Samhälls Guiden)。これはそれぞれの市民が社会から受け取れるサービスを受益者カテゴリー別に整理して一覧表にしたもの。たと…

世銀「あたしって、ほんとバカ」 QB「そうだね」

■「小さな政府論」者が消費税を選好する場合の理由の一つ■ 所得税は納税者の申告によらざるをえない。それがうまく実行されるかどうかは一つには納税者の善意と、一つには徴税官吏の検査査定能力の二つの条件にかかっている。 (某書より引用)■植民者たちに都…

シャハラザードさん、マジパネぇっす。

■ある種のオマージュですかね。■ たしかに『ボヴァリー夫人』『ノーサンガー・アベイ』『ドン・キホーテ』の語り手は、主人公がかけている物語メガネに段階的に冷や水を浴びせ、罅を入れていった。 […] むしろ三人の小説家は、既存ジャンルを愛すればこそ、…

科学者「自分は直接関係ないから分からない」

■原子力村の由来■ 原子力産業 […] この世界では最初から推進・反対の色分けが重要で、推進者はインサイダー、反対者はアウトサイダーとして締め出されていく。 […] このような特徴は、国際的に原子力産業には共通で、おそらく軍事開発から始まり常に軍事的に…

『純粋理性批判』が読みにくい理由

■『純粋理性批判』が読みにくい理由■ 彼はみずからラテン語をドイツ語に翻訳しながら執筆を続けていた。そのさい、構文もずいぶんラテン語ふうになっていて、そのままドイツ語で読むと奇異なところもあるようです。 例えば、ラテン語は文章の区切りがはっき…

スウェーデンがソ連よりも平等、な一例。

■日本にもこういう本が欲しい。■ スウェーデン人が手元に置いて、必要があるたびに読む本が何冊かある。 […] まず『社会ガイド』(Samhälls Guiden)。これはそれぞれの市民が社会から受け取れるサービスを受益者カテゴリー別に整理して一覧表にしたもの。たと…

石原慎太郎における左翼性

■石原慎太郎における左翼性■ 石原慎太郎という人はいつまで左翼だったか調べるべきだと思うんだけど(笑)、 […] 深沢七郎『風流夢譚』(初出『中央公論』一九六〇年一二月号)をいちばんナイーブかつ左翼的に読んで「われわれ庶民に天皇制はいらない」、「痛…

重大なものが書き落とされたとき、あるいは「セカイ系」な記事 -とある産業経済新聞の記事を読んでの感想-

産経新聞の記事を読んで、すごく違和感があったので、書いていきます。 (「教師が反日誘導「日本人に拉致を言う権利はない」 元生徒が朝鮮学校の実態告発」) ここで問題として扱うのは、?この文章そのもの「フィクション性」、すなわち(この高校生が"実在…

ケインズと「予想」

■ケインズと「予想」■ 「先生! ラディカル・エコノミストは、ケインズ派は『予想』行動を国民所得理論に有機的に組み入れていないと批判しています。それではケインズ派が『予想』行動を理論化できなかった理由は次の(1)から(4)までのどれでしょう? 」 […]…