2013-01-01から1年間の記事一覧

いい意味でタイトル詐欺、あるいは、まっとうな経営学。 -F・ヴァーミューレン『ヤバイ経営学』を読む。-

フリーク・ヴァーミューレン『ヤバイ経営学』を読んだ。 実に面白い本。 気になった所だけ書いていく。 会社にいる人間の行動を調べてみたら、けっこう彼らは、会社のデータ(数字)を無視して、代わりに経験や質的な評価、直感によって判断している(32頁…

「ジョブ型正社員」は、先ず隗より始めよ、みたいな話。  -濱口桂一郎『若者と労働』に対する感想-

濱口桂一郎『若者と労働』を読んだ。 著者の本(ただし全部新書!)を扱うのは、三冊目となる。 本書は、 日本のメンバーシップ型雇用の歴史的成り立ちと、現在抱えている問題点とを、 「入社」というまさにメンバーシップ型雇用社会に特徴的な事柄を糸口にし…

下の「身内」を「殺害」して、上の者はおめおめ生きのびた。 -保阪正康『「特攻」と日本人』、大貫健一郎, 渡辺考『特攻隊振武寮』-

保阪正康『「特攻」と日本人』と、大貫健一郎, 渡辺考『特攻隊振武寮』を読んだ。 気になった所だけ。 まずは『「特攻」と日本人』。 著者の見解について、幾つか気になる点はあるのだが、それでも賛同できる部分は多かった。 昭和十九年の十月、台湾沖航空…

「格差」を是正しなければならない時。 -「不法入国」から「金融危機」まで- ミラノヴィッチ『不平等について』を読んで

ミラノヴィッチ『不平等について』を読了。 あのトマス・ポッゲが推薦していたので、読んだ。 曰く、「楽しみ満載のこの本で、経済的不平等という深刻な主題について学んでみよう!」 特に面白かったところだけ。 ソ連などの社会主義国家について(61、62…

雇用の常識、探ってTRAY・戦後日本の雇用編 -海老原&荻野『日本人はどのように仕事をしてきたか』雑感-

海老原嗣生・荻野進介『名著で読み解く 日本人はどのように仕事をしてきたか』を読む。 戦後に出版された(日本の)雇用系「名著」の中身と、その本の歴史的な存在意義を解説している。 だが、それだけではなくて、その「名著」の著者たちの「コメント」(反論?…

湛山と憲法と平和とワイシャツと私 -増田弘『石橋湛山』を読む-

増田弘『石橋湛山』を再び読む。 リーダブルだし、面白い。 気になった所だけ。 湛山は新兵として苦労を重ねている(17頁)。 入営時に60kgほどあった体重は48kg台まで減り、在営中ついに回復しなかった。 湛山は軍隊に在籍した一年間に、戦争への…

戦後になっても、靖国神社がついに己自身を克服できなかった件 -赤澤史朗『靖国神社』を再読する-

赤澤史朗『靖国神社』を再読する。 (たぶん)知られざる良書である。 いつもどおり、興味のあるところだけ取り上げていく。 「靖国神社の祭礼には、競馬やサーカスなどの娯楽が付きまとい、多くの観衆が集まった」というふうに、庶民にとって靖国神社が親し…

「俺の市場経済がこんなに万能なわけがない。」 「そらそうよ。」 -ハジュン・チャン『世界経済を破綻させる23の嘘』再読-

ハジュン・チャン『世界経済を破綻させる23の嘘』を再読した。 やはり、面白い。 特におもしろいと思った所だけ、書いていく。 アダム・スミスが、株主が有限責任しか負わないということで株式会社を批判したのに対して、マルクスは株式会社を擁護した(36…

憲法と中央集権とウォリンとアレントと。 (短文) -『政治思想史の方法』(小笠原、飯島,編)から-

『政治思想史の方法』(小笠原弘親、飯島昇蔵,編)の、川上文雄「シェルドン・ウォリン―政治理論史の研究と政治理論の復権」に次のような内容が書いてある(214頁)。 曰く、ウォリンは、アレントについて次のように述べているという。 アメリカ憲法の草案…

斎藤茂吉の「異化」的作歌法と、近代における『万葉集』利用 -品田悦一『斎藤茂吉』を読む-

品田悦一『斎藤茂吉』を読む。 著者は、『万葉集の発明』を書いた人。 前著もそうだったけど、面白い。 茂吉だけでなく、それ以外の主張も面白い。 気になった所だけ。 茂吉の訛りは酷かった(32頁)。 彼の晩年の歌の朗吟を聞けば分かるが、結構訛っている…

「人道的介入」の「人道」の部分を、もっとちゃんと考えろ、っていう話。 -最上敏樹『人道的介入』を読む-

最上敏樹『人道的介入 正義の武力行使はあるか』を読む。 まったく古びていない。 それくらい、すぐれた書物ということなのか。 はたまた、世の中が進歩もせずに停滞しているだけなのか。 「人道的介入」を含め、あらゆる国内外における「武力行使」を考える…