2009-11-01から1ヶ月間の記事一覧

日米関係における「血を流す」というレトリック 豊下楢彦『集団的自衛権とは何か』(1)

・豊下楢彦『集団的自衛権とは何か』岩波書店 (2007/07)■気を回しすぎた日本、リアリスティックな米国■ 日本の政府や外務省が、日本の側から米国に沖縄の返還を求めるならば「米国の感情を害するであろう」とか、「米国の反発を招くであろう」と逡巡している…

グローバル化におけるヒト・モノ・カネの流れのズレ 土佐弘之『アナーキカル・ガヴァナンス』

・土佐弘之『アナーキカル・ガヴァナンス 批判的国際関係論の新展開』御茶の水書房 (2006) 【異なるはずの二つのものの、補完と結託】とでもいうべき現今の世界のありようを論じている、と本書を要約することができるでしょうか。「2008-03-31」の記事にて、…

?日本人は信仰心が薄いのか、?現代人は欲深いのか? 『一Q禅師のへそまがり“宗教”論』(4)

■宗教において、急ぐことは禁物です。■ 宗教的な伝統が最も近代の世俗社会と対立するのは、実はこの時間というファクターかもしれん。神や霊魂が不合理とか、そういう問題よりも、時間意識の違いというものがいちばんのギャップとなっているのかもしれないの…

「神は妄想である」かどうか考え直す。 中村圭志『一Q禅師のへそまがり“宗教”論』(3)

今回以降、基本的に、【重要な箇所の引用(抜書き) + これに対するコメント】という形式をとります。 本書については、途中まで、書いていたもの(既稿(1)、(2))があります。今回は、その途中の部分のと重複もありますが、すべてを上記の形式で書い…

宗教は【洗脳】でも【思想】でもなく、【生活】である。 中村圭志『一Q禅師のへそまがり“宗教”論』(2)

■内面的信仰よりまず、集団内での実践がある■ 【宗教といえば信仰】と、このようにつなげて考えてしまいがちです。しかし、たった一人内面的・精神的に敬虔であることが信仰、というのが、イコール「信仰」なのでしょうか。とりわけ「信仰」と聞くと、まず、…

「神」 -たかがレトリック、されどレトリック- 中村圭志『一Q禅師のへそまがり“宗教”論』(1)

・中村圭志『一Q禅師のへそまがり“宗教”論』サンガ (2009/1)■宗教/世俗の境界線と、その曖昧さ■ イスラームとキリスト教が対立している、ということがよく言われます。「文明の衝突」等がそれにあたるでしょう。しかしそうではなく、「ある種の宗教システム…

1864年の「虚構」への知的賭け/1936年の「変化」を忘れた「改革」 蓮實重彦・山内昌之『われわれはどんな時代を生きているか』(10)

■「虚構の物語」への知的な賭け、1864年をめぐって■ 自分はどんな時代を生きているのか。あけすけにいうなら、同時代でもある「近代」とは何か。これが第10章で、蓮實が問うとする事柄です。 自分は、同じフランスの19世紀でも、「バルザックやスタンダール…