2009-09-01から1ヶ月間の記事一覧

多文化主義の弱点と、世界の首都 蓮實重彦・山内昌之 『われわれはどんな時代を生きているか』(1)

・蓮實重彦/山内昌之 『われわれはどんな時代を生きているか』講談社 (1998/05) 本書は、フランス文学者であり映画批評家である東京大学学長(当時)と、同大学のイスラーム史を専門としながらもそれ以外の分野にも博学で知られる教授による、「往復書簡」と…

紙のリサイクルは熱帯林を救わない? 宮内泰介『自分で調べる技術 市民のための調査入門』

・宮内泰介『自分で調べる技術 市民のための調査入門』岩波書店 (2004/07) もちろん、この本は、調査のための手引きとして使えるものですので、調査する際に注意すべきことを知りたい方は、類書を含めてこの本を読んでいただけたらと思います。本書について…

「日台戦争」あるいは、「芸」のためのガイドブック 特別番外編(0)(本田善彦『台湾総統列伝』)

http://d.hatena.ne.jp/higeta/20090509/p1 に捧ぐ■はじめに■ 「コメント欄の容量にも限りがあります」とブログの管理人が書いているのに、なかなか止められない人はいるものです。まるでアメリカが止めても入植をやめなかったイスラエルのようです(もしか…

「漢民族」とは何か?、ある「台湾人」をめぐって 番外編(3)(本田善彦『台湾総統列伝』)

■?に対して■ 次に移ります。NHKの例の番組で、台湾人のある人物について、「中国福建省から移り住んできた漢民族」との表現を行ったことに対して、批判が挙がりました。果たして、この人物に対して、「漢民族」と表記することは、妥当なのでしょうか。 具体…

「日台戦争」・「台湾征服戦争」が「戦争」であることの妥当性 番外編(2)(本田善彦『台湾総統列伝』)

■?について■ 次に、「日台戦争」(「台湾征服戦争」)という表記の妥当性の問題です。先述したとおり、学術的用語の問題ですので、台湾の人々が聞いたことがない云々等は、大きくは関係しません。また、「日台戦争」という用語を、この事件に対して使うこと…

1910年日英博覧会の「展示」への「人間動物園」という表記の妥当性 番外編(1)(本田善彦『台湾総統列伝』)

なにやら、「NHKスペシャル シリーズ 『JAPANデビュー』アジアの“一等国”」という2009年4月に放映された番組に対して、「抗議」云々があったそうで、wikipediaの項目を見てみました。その「批判」された点は大まかに三つ。 ?1910年にロンドンで開かれた日英…

侯孝賢の『悲情城市』のはなし 本田善彦『台湾総統列伝』(5)

■侯孝賢の『悲情城市』について■ 蔣経国は、70年代以降民主化を進め、国民党以外の政治勢力の活動も容認されるようになります。そして彼の死後、李登輝が政治的実権を着実に握ろうとしていた1989年に、公開された映画が侯孝賢の『悲情城市』です。87年には…

ニ・ニ八事件と共産主義者たち 本田善彦『台湾総統列伝』(4)

■ニ・ニ八事件、及び相互不信の問題■ 本書でも、ニ・ニ八事件は取り上げられています。本件のいきさつについて、引用できるものを孫引きしようと思います(矢吹晋「映画「悲情城市」と田村志津枝著『悲情城市の人びと』」(『蒼蒼』98 年 2月10日、逆耳順…

台湾のアイデンティティと、中国共産党の存在 本田善彦『台湾総統列伝』(3)

■本書に対する批判に対する反批判■ 著者の第五章に関しては、すでにウェブ上に書評が存在しています。これに突っ込みを入れなら、本書の著者の主張を見ていきましょう。その書評というのが、「書評『台湾総統列伝』−「中立的視点」を斬る」です(この書評の…

蒋介石の「日本精神」 本田善彦『台湾総統列伝』(2)

■蒋介石の「日本精神」■ 本書では、父親・蒋介石についても、いろいろな情報を載せています。 例えば、台湾・中華民国での経済的基盤について。日本側が残した資産は、その多くが政府と国民党の資産となります(11頁)。 たしかにこれは常識的ですが、さら…

蒋経国による台湾民主化の行方 本田善彦『台湾総統列伝』(1)

・本田善彦『台湾総統列伝 米中関係の裏面史』中央公論新社 (2004/05) 米中両大国とのあいだで揺れる小国・台湾の歴史が、国家のトップである総統の「列伝」を通して描かれています。列伝に描かれているのは、蒋介石、蒋経国、李登輝、陳水扁の四人です。こ…