『政治思想史の方法』(小笠原弘親、飯島昇蔵,編)の、川上文雄「シェルドン・ウォリン―政治理論史の研究と政治理論の復権」に次のような内容が書いてある(214頁)。
曰く、ウォリンは、アレントについて次のように述べているという。
アメリカ憲法の草案者たちについて、アレントは経済的な動機について分析をしなかった。(彼女の議論の特徴であることは言うまでもない。)
そのため、アメリカ憲法についての説明は、「中央集権への強い意欲」を解釈しないままで終わった。(「中央集権」には、当然経済的な動機が隠されている。それは、仏国等の絶対王政における商業の発展などの歴史的事実を挙げれば容易に分かる、と思う。)
また、州議会をとらえていた民主的な社会運動を、建国の父たちが押し留めようと躍起になっていた、という事実も無視することとなった。
民主的参加を通じての権力の制限を目指すウォリンには、アレントのように憲法立案者たちを政治的なものの回復の試みとして高く評価することは、到底できなかった。
アレントの議論の「陥穽」の一つ、かもしれない。