2011-01-01から1年間の記事一覧

供給が、人の欲求を駆り立てる

■供給が、人の欲求を駆り立てるとき■ 流通は自由をその原理とし、支配主体の定められぬ「無主」の都合により民主の形を取るので、よけいに自在に、障壁に妨げられず、まさしく融通無碍に、人の生活を貫いて流れる。もっぱら人の欲求に仕えるものと触れ込みな…

「脳内再生」の効果。

■ワーズワス、この近代文学の祖■ 平易な言葉遣い、自然の賛美、幼年期への郷愁、貧しい人々への共感、闇の力への畏怖など、ワーズワス詩の特徴は多岐に渡るが、瞑想的な傾向がとりわけ強い。自然を前にして人間が受ける感覚的な印象を […] 形而上学的な想像…

自分が大事だったモンテーニュ

■スタンダールェ...■スタンダールも『イタリア絵画史』と『イタリア画派』で、アモレッティ、ボッシ、ヴェントゥーリ、ビニョッティなど「誰彼カマワズ」大量に剽窃している […] 『ローマ、ナポリ、フィレンツェ』はどうか? この本の著者を賞賛する記事が『…

形式を踏んだら、やりたい放題です。

■ハロルド・ブルーム自身の「影響の不安」?■ とにかく、自分で規定した抒情詩の原型が遵守されるか否かだけがブルームにとっての関心事だからであり、おのれの築いた「影響の不安(anxiety of influemce)」なる理論を当てはめるために、先行詩人の名前を列挙…

ロマン主義の歴史観と階級闘争

■第二帝政、あるいは抑圧された時代の文学■ ルイ・ボナパルトのクーデタの後、ユゴーやウージェーヌ・シューは亡命し、歴史家ミシュレとキネはコレージュ・ド・フランスの教職から追われ、ゴーチエは社会的現実に背を向けて象牙の塔に閉じこもった。フランス…

「巴御前は、木曽義仲の「妻」じゃなくて、「便女」なんですよ」というお話。 田中貴子『検定絶対不合格教科書古文』を読む

田中貴子『検定絶対不合格教科書古文』を読む。 中身は実にまっとうな本。 信じられないかもしれないが、実に、まともだw 清少納言は、高慢ちきな女として一般に思われているけど、実際の所、彼女が『枕草子』に書きたかったことって、中宮を中心とするサロ…

反「教祖」・反「男性中心主義」・反「起源」としてのゴダール -ゴダールの贅沢さについて- 蓮實重彦『ゴダール革命』

『ゴダール革命』を読む。 一部の文章は既にネットにアップされているため、ネット上にあるものは、それを用いるものとする。 以下、「ゴダールの孤独」の章より リチャード・バートンとシルヴィー・ヴァルタンを主演に迎えるという当初のアイディアに固執し…

「おそるべき君等の乳房夏来る」(西東三鬼)を公の文章に引用した憲法学者は、多分著者が最初。 長谷部恭男『憲法のimagination』(後編)

再び『憲法のimagination』を読む。 ルソーは、戦争とは相手の国の社会契約に対する攻撃であり、根本的なレベルで大戦争にいたる国家間の対立を終結させるためには、社会契約自体を変更する必要がある、と述べた(175頁)。 で、戦前日本の憲法だと天皇主…

東京大学 -ボクと言語と、時々、大森荘蔵- (憲法学から少し離れて) 長谷部恭男『憲法のimagination』を読む(前編)

長谷部恭男『憲法のimagination』を読む。 著者のユーモア(芸?)も混じえつつ、著者の憲法観が早分かりできる(?)好著だ。 著者の学問的(及び非学問的)興味は広く面白く、そこも見所。 「配偶者」さん(も学者。)とのやり取りも面白い。 憲法は、公務…

今まで言わなかったけど、中島敦『山月記』の漢詩に出て来る「長嘯」は、「詩を吟じる」って意味じゃないんだ 齋藤希史『漢文スタイル』(後編)

またも、齋藤希史『漢文スタイル』 を読む。漢文スタイル作者: 齋藤希史出版社/メーカー: 羽鳥書店発売日: 2010/04/13メディア: 単行本 クリック: 32回この商品を含むブログ (10件) を見る 著者曰く、今の時代に必要なのって、韓愈じゃなくて、焚紹述樊紹述…

「士大夫」という非ナショナリズム性、そして他者から「見られる」ことから生まれたナショナリズム -ついでに『敗戦後論』について少し- 齋藤希史『漢文スタイル』(中編)

齋藤希史『漢文スタイル』を再び読む。 なぜ、著者は、「漢文脈」にこだわるのか(「漢文脈」って何?ってひとはググってね)。 幕末・明治期の人、竹添井井『桟雲峡雨日記』(中国・蜀地方に滞在していた時の日記)に言及して著者は言う。 彼の記述の中には…

「正解はひとつじゃない」、という漢詩の訓読に対する教訓 -あと、謝霊運について少し- 齋藤希史『漢文スタイル』(前編)

齋藤希史『漢文スタイル』を読む。 記事の中に、重複する箇所がいくつもあるけど、それを差し引いても実に面白い。 中国における隠者たち、隠遁して政治の舞台から隠れて生きる人々。 陶淵明とか、想像するとわかりやすいと思う。 この隠者たちは、前代の隠…

詩作ならまず辞書引けとはいうけれど辞書ない時代はどう作ったのよ -なぜ短歌なのか、短歌の何がいいのか- 穂村弘『短歌という爆弾』・雑感

穂村弘『短歌という爆弾』を読む。 俵万智の歌。 砂浜に二人で埋めた飛行機の折れた翼を忘れないでね この歌のポイントは、桜貝とかじゃなくて、「飛行機の折れた翼」を選択したことにある(117頁)。 読者は、自分の体験とかけ離れた一撃を通過すること…

復興費用と消費税に関するどうでもいい話(未完) -猪木武徳先生の議論について-

猪木武徳先生が、復興費用の調達のため、消費税の臨時増税も検討しているらしい。 で、今月の『中央公論』で、自らに寄せられた反論に対して、反批判をしている(猪木武徳「デモクラシーの病が経済を混乱させる」)。 普通に考えると、日銀引き受けでも問題…

「歴史小説を書きたいなら優秀な専門家に御指導いただきましょう」的な話 -佐藤亜紀『小説のストラテジー』を読む(後編)-

三たび、佐藤亜紀『小説のストラテジー』を読む。 西欧において、回想録はどのような意味を持つか。 それは自分の事跡を後世の歴史に残すためであり、彼らは日記でさえも、それを目的に綴っている(179頁)。 回想録と言うのは、見て欲しい自分を描くため…

フィクションという、実にアンチ・プラトン(哲学?)的なもの。あるいは、ミメーシスVSディエゲーシスの問題 -佐藤亜紀『小説のストラテジー』を読む(中編)-

再び、佐藤亜紀『小説のストラテジー』を読む。 著者曰く、必然性のない店の名前や商標は、小説の古典的な技法では確かに避けるべきものだとされているけど、もし、小説の中でお茶をするのにスタバでもケンタでもなくドトールに行く必然性が、読み手にもはっ…

確かに、ドストエフスキー作品は、インテリ文学じゃなくて、メロドラマそのものですよね。 -佐藤亜紀『小説のストラテジー』(前編)-

佐藤亜紀『小説のストラテジー』を詠む。 深層の「意味」の誘惑を拒み、あくまでも表層にとどまり溺死せよ、とのテーゼは、とっても正統派(24頁)。 何だか、蓮實重彦に近い気がする。 オスカー・ワイルドは、批評家の意見が一致しない時、作家は自分自身…

短歌などまるで詠む気は無いけれど「尾崎かまち」は自殺ですよね -枡野浩一『かんたん短歌の作り方』を読む-

枡野浩一『かんたん短歌の作り方』を読む。 一見不真面目な著者だが、実は歌への姿勢は真摯であり、真面目。 句読点をつけると、どんな退屈な言葉だって一見意味ありげに見えちゃうんです。それは危険なワナ。記号なんか全部捨てても通用するような強い言葉…

「大和撫子」という語に関する歴史と、「もう<ピンク・ジャパン>でいいじゃん」、というどうでもいい話

すんごくどうでもいい話。 あるサイトを見ていたらこんなのがあった。 万葉集の時代には『なでしこ』の花と「かわいらしい子」をかけてよく詠まれたのですが、多く女性のことを歌ったようです。そこから『撫子』といえば女性を想像したのですね。『なでしこ…

零度のシャシンを求めて (但し厳密には、決闘は行われていませんw) -篠山紀信,中平卓馬『決闘写真論』-

篠山紀信,中平卓馬『決闘写真論』を読む。 ただし、「決闘」とはいっても、文章の方(中平)の内容は、最終的に、篠山の写真に対する賛意で占められることになる。 特定の意味づけをすることのない、パンフォーカス的な「写真」(アジェ、エヴァンズら)への肯…

やっぱり、物語よりも、細部に対する記憶(執着)を選びたい。 -大塚英志『物語の体操』を読んで-

『物語の体操』を読む。 物語を作る気などさらさらないのに、何故か読む。 物語など、いくらでも跡付け捏造すればいいじゃない、などと愚かなことを考えてしまう性分だがw 気になった所だけ。 小説を書くとき、登場人物を一度、絵にしておくと何かと便利だ…

なるほど、「冗長性」(本書では「畳長性」と表記)って、とても大切なんですね、分かります -山内志朗『畳長さ”が大切です』-

山内志朗『畳長さ”が大切です』を読む。 「冗長さ」(本書では「畳長性」と表記)をポジティブに論じる。 なお、以下の文章自体が、本書の「冗長さ」(本書では「畳長さ」と表記)を削り取って出来ていることは、一切気にしてはならないw 「冗長記号」(本…

中央銀行(+政府)の金融政策への果然とした姿勢こそが、市場の「予想」を動かす 岩田規久男『デフレと超円高』を読む

岩田規久男『デフレと超円高』を読む。 良書評として、『事務屋稼業』さんのこちらの記事も御参照ください。 「実質実効為替レートでみると、現在は円高ではない。」 このような発言は、デフレは問題じゃないよ、といっているのと一緒(62頁)。 真顔で言…

戦争の扇動者、女衒志願者、熱血教師 -二葉亭四迷の顔- 亀井秀雄『二葉亭四迷 戦争と革命の放浪者』(後編)

亀井秀雄『二葉亭四迷 戦争と革命の放浪者』を再び読む。 大津事件について。 アレクサンドル3世は、内政では大弾圧をしたが、一方で、対外的には、露土戦争での従軍経験から戦争を忌避し、平和を貫いたという(155頁)。 確かに、この人、在位13年近…

遂にドストエフスキーを翻訳しなかった二葉亭四迷をめぐって 亀井秀雄『二葉亭四迷 戦争と革命の放浪者』(前編)

亀井秀雄『二葉亭四迷 戦争と革命の放浪者』を読む。 彼がいかにして、戦争に関わり、革命に関わり、生活をし、そのなかで文学や翻訳を行ったのか。 興味あるところだけ取り上げる。 坪内逍遥『当世書生気質』は、次の点で画期的だった。 近世の洒落本の場合…

愛国主義と進化論の関係 IN CHINA -あと、俗にいう「中華思想」について- 吉澤誠一郎『愛国主義の創成』を読む

吉澤誠一郎『愛国主義の創成』を読む。 ハクスリー『進化と倫理』は、進化論を背景に人間の倫理を考えた書物。 しかし、実は、その述べるところはマトモ。 曰く、例えば、ガーデニングをするとき、そこは周囲とは異なる環境の状態になる。 つまり、自然の過…

明治期、実は離婚率が現代よりも高かった件について -ついでに、見合い写真による結婚について- 湯沢雍彦『明治の結婚 明治の離婚』

湯沢雍彦『明治の結婚 明治の離婚』を読む。 手堅くて、いい本。 明治時代って、半ば過ぎまで、実は離婚がとっても多い社会だった。 離婚率は、昭和40年ごろに比べて、3倍近く、最近と比較しても5割近く高い(7頁)。 なんで?という疑問に本書は答えよ…

コーチング入門としても最適かもしれません -でも演劇より映画のほう好きw- 平田オリザ『演技と演出』を読む

平田オリザ『演技と演出』を読む。 演劇に関心のある人もない人も、読んで損なしの良書。 俳優はどうしても台詞をうまく言おうとして、台詞に意識が集中してしまう。 著者は、そこで、俳優に色々な"負荷"(歩かせたり、時計を見たりする等の、動作)をかけ、…

取調べの現状が、日本も酷いし、他の先進国も酷い件 -再び、小坂井敏晶『人が人を裁くということ』を読む-

小坂井敏晶『人が人を裁くということ』を再び読む。 ある研究。 取調べの場面を録画(録音)して、大学生と警察官に見せ、被疑者が本当のことを述べているかを答えさせた。 嘘だと誤判断した割合の場合、大学生46%に対し、警察官は67%だった(正しいと…

日本の裁判員制度って、やっぱり有罪にしやすいみたいですよ (制度を比較したら) -小坂井敏晶『人が人を裁くということ』を読む-

小坂井敏晶『人が人を裁くということ』を読む。 日本の裁判員制度だと、裁判官3人全員が死刑判決を支持すれば、裁判員6人のうち2人が賛成すれば、過半数になってしまう。 頭のいい裁判官になら、2人程度の誘導など難しくあるまい。 他の国ならどうか(1…