2011-01-01から1年間の記事一覧

「傲慢さが垣間見えると、足元をすくわれかねない」と大臣は言った -松本龍『環境外交の舞台裏』を読む-

松本龍・著(日経BP環境経営フォーラム・編)『環境外交の舞台裏』を読む。 著者は、就任から2日間で生物多様性やCOP10の資料を買い込んで勉強し、「下手な英語」のスピーチの練習をしたという(4頁)。 本書に書いてあるけど、決して環境に対する意識…

二大政党制じゃなくても、ちゃんと政治ってできるから。これ豆な。 -吉田徹『二大政党制批判論』を読む-

吉田徹『二大政党制批判論』を読む。 正直、第3章が一番面白い。 それ以外の章は、その分、色あせてしまうくらいだ。 政党助成金。これは世界各国で導入されている。 ただ、ドイツでは、90年代に入って、政党活動の自由に抵触する可能性があると憲法裁判…

「なんでキリスト教ってあんなに広まったんだよ?」に対する田川建三の回答 -田川建三『キリスト教思想への招待』を読む-

田川建三『キリスト教思想への招待』を読む。キリスト教思想への招待作者: 田川建三出版社/メーカー: 勁草書房発売日: 2004/03/01メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 17回この商品を含むブログ (27件) を見る カール・バルトの神学について。 カール・バル…

「政治家のレベルが下がったというより、国民の要求レベルが上がった」というごもっともな話/ほか -原田泰『日本はなぜ貧しい人が多いのか』を再び読む-

原田泰『日本はなぜ貧しい人が多いのか』(2009年)をまた読む。 著者は、日本は、イギリス、フランス、ドイツ、アメリカ、のように、生活保護の給付水準を引き下げて、生活保護を受ける人の比率を高くすべきだ、という(96頁)。 イギリスやフランス、ド…

そりゃあ、下手な産業政策論より、(広義の)インフラ整備のほうがずっと平等ですよね -原田泰『日本はなぜ貧しい人が多いのか』を読む-

原田泰『日本はなぜ貧しい人が多いのか』を読む。 著者とスタンスを同じくする人も、そうでない人も、是非ご一読いただきたい。 政府が、産業に出来ることについて(24頁)。 日本政府が国内産業に出来ること。 何をすればいいのか、実は学問的に、良く分か…

「じゃましマン」が凄過ぎる、という結論しかない -松本哉、二木信,編『素人の乱』を読んで-

松本哉、二木信,編『素人の乱』を読む。 松本の証言によると、PSE法の時は、「国会議員に訴えたりマスコミとやりとりしたりが多かった」らしく、そっち方で忙しかったそうな(111頁)。 マスコミへの電話やファックス、政党や国会議員へのコンタクトなどで…

サルコジ(当時,大統領候補)より労働者に優しくないニッポンの政治 orz -あと、「いい加減、供託金自体廃止しろよ」な件-

薬師院仁志『民主主義という錯覚』を再び読む。 J・S・ミルは、「知性の度合いが低い」人間が投票する危険を排除するため、普通選挙のために「試験」を実施すべきと提案した。 衆愚政治を嫌ったためだ。 現代からすると、奇異に思う人もいるかもしれないの…

究極的な民主主義は、確かに"くじ引き"だ -英米的な所有権優先主義 VS ルソー的"みんな"による法治国家主義-

薬師院仁志『民主主義という錯覚』を読む。 タイトルを実際の内容に即して付け直すと、『日本人が誤解している「民主主義」のあれこれ』見たいな感じかな。 正直言うと、米国はともかく、英国の政治に対する考察が不足しているため、いまいち内容がまとまっ…

「10個の2位よりも、1個の1位を目指せ」的な話なわけですよ -飯田泰之,坂口孝則『経済とお金儲けの真実』を読む-

飯田泰之,坂口孝則『経済とお金儲けの真実』を読む。 目次を見ると「釣り」が多いけど、指摘は比較的マトモですw 経済(マクロ)とお金儲け(ミクロ)の関係を、主題にした珍しい(?)本かも。 それにしても。この本にも、戸籍法がなぜ未だに残っているのか分から…

「あなたがいなくなると悲しい」、あるいは、仏教と自殺の関係について少し -磯村健太郎『ルポ仏教、貧困・自殺に挑む』を読んで-

磯村健太郎『ルポ仏教、貧困・自殺に挑む』を読む。 釜ヶ崎で日雇い労働者や路上生活者の支援をしている大谷派の僧侶・川浪さんは次のように言う(65頁)。 路上生活していた時に、「はじめて寝た日、不安で不安でたまらなかった」、と。 ヒールの音が近づ…

結局、「コンプライアンス」の適切な訳語は何でしょうね? -郷原信郎『検察が危ない』を読みながら-

郷原信郎『検察が危ない』を読む。 検察は、90年代のゼネコン絡みの事件の時、結局業界の談合構造そのものに手をつけなかった。それどころか、指名競争入札から一般競争入札になって、業者間の"調整"行為は巧妙になった、という(112頁)。 要するに、…

「彼らの労働を肯定できずに、誰の労働を肯定せよというのか」、あるいは「迷惑上手」のススメ -大熊一夫『精神病院を捨てたイタリア 捨てない日本』を読んで- (追記あり)

大熊一夫『精神病院を捨てたイタリア 捨てない日本』を読む。 かの悪名高い、宇都宮病院、大和川病院の話も出てくる。 日本の精神病棟は、九割が私立。 23頁の箇所を引用すると、 先進国のほぼすべてが一九八〇年以降、精神科病床を急激に減らして、精神病…

問題:「海徳格爾」って誰のことでしょうか? -王前『中国が読んだ現代思想』を少しだけ読む-

王前『中国が読んだ現代思想』を読む。 中国語では、ハイデッガーのDaseinの訳語は、「親在」らしい(熊偉による訳語)。 「親」は、身をもって、自ら、親愛などの意味で使われるため、ハイデッガーの言う、「情態性」の意味と一致していると言う(52頁)…

「これは"太平洋戦争"ですか」「はい、"アジア・太平洋戦争"です」 -旧日本軍が東南アジアにいた頃-

倉沢愛子『「大東亜」戦争を知っていますか』を読む。 所々、反論したい所も出てくるけど、主題部分については勉強になる箇所が多い。 ちなみに、著者は、太平洋に面してなくても東南アジアも戦場・占領地だったんだから、カッコつきで、「「大東亜」戦争」…

小泉政治を振り返る(但し、何故か2003年の書物を使ってw) -政策的な節操のなさと、制度への無関心-

大嶽秀夫『日本型ポピュリズム』を読む。 2003年の書物。 所々面白い。 小泉純一郎は、実は、外交や防衛問題に殆ど関心のない政治家である(91頁)。 例えば、彼は、岡崎久彦(元駐タイ大使)からのレクチャーで、集団的自衛権の問題を聞いている。た…

タダで生きることの知恵、そして、タダで即戦力を得ようとする愚かさについて -松本哉『貧乏人の逆襲!』・雑感-

松本哉『貧乏人の逆襲! -タダで生きる方法-』を読む。 実に実践的。 そして、説得的。 野宿の際は、サングラスかけて寝るのも手である(26頁)。 起きてるかどうか、分かりにくいから。 実際効果的だ。(夜なら、まずバレない) ヒッチハイクの方法。 道端で…

"都市型狩猟採集生活"と資本主義のカンケイ -ホームレスであることの自由と、社会福祉について-

坂口恭平『ゼロから始める都市型狩猟採集生活』を読む。 都市では、勤め人にならずとも、工夫すれば生きられることを証明している。 スーパーで、「無報酬でゴミ捨て場の掃除をやるので、その代わりあまった食材ください」と直談判する方法が紹介されている…

公費投入が、実は"ニッポンの大学"を変える可能性がある件 -矢野眞和『「習慣病」になったニッポンの大学』を読む 後編-

矢野眞和『「習慣病」になったニッポンの大学』を読む。続き。 著者は、世間のお偉いさんの(上記のような)「無理に大学に進学する必要はない」という主張を批判する。だって、高校や専門学校の就職は大学よりもっと厳しいから(213頁)。大学進学を目指…

いかにして「どうしてこうなった日本の大学 orz」となったか? -矢野眞和『「習慣病」になったニッポンの大学』を読む 前編-

矢野眞和『「習慣病」になったニッポンの大学』を読む。「習慣病」になったニッポンの大学―18歳主義・卒業主義・親負担主義からの解放 (どう考える?ニッポンの教育問題)作者: 矢野眞和出版社/メーカー: 日本図書センター発売日: 2011/05/24メディア: 単行本…

「ことだま でしょうか いいえ、誰でも」後編 -言霊について私が知っている二、三の事柄-

川村湊『言霊と他界』(講談社学術文庫版)を読んでみる。 Wikipediaの項目に、「声に出した言葉が現実の事象に対して何らかの影響を与えると信じられ、良い言葉を発すると良い事が起こり、不吉な言葉を発すると凶事が起こるとされた」とあるように、元々言霊…

「ことだま でしょうか いいえ、誰でも」前編 -結局、「言霊信仰」って言いたいだけだろw な話-

"言霊信仰"ってのが、この世界にはあるそうで。 で、人によっては、日本人はずっと昔からこれに囚われてるんだ云々、といってる人もいるらしい。 実際どうなのよ。 ためしに「井沢説にみる日本人に独特の"宗教感情"」という記事を見てみようかな。 以下、引…

さすが大西巨人、教養に溢れてる -大西巨人『春秋の花』をよむ-

大西巨人『春秋の花』を読む。(作者のHPに、全文あり) アンソロジー集。 教養がにじみ出てて、お見事。 おれは上り坂を上って行くぞ。「死」のことはわからぬ。わからぬけれど上り坂だ。 これは、中野重治の短篇からの引用。 すごいのは、これを心内語と…

国歌斉唱と、トナカイと、地方自治と -大人な合意って奴を、生徒に見せてあげてね-

新保信長『国歌斉唱』を読む。 内容は普通。まあ強制は良くないんじゃないかな、的な内容。 一応ちゃんとしらべてて、「緑の山河」とか「われら愛す」の話題も出てくる。 ピチカート・ファイヴの「君が代」の話も出てる。 松山千春が、君が代に敬意を表しつ…

「プルーストってどんな人?」後編 -友情を信じることだけはしなかった人について-

アラン・ド・ボトン『プルーストによる人生改善法』をまた読む。 プルーストってどんな人? 喘息の人。 日中に多発するため、夜型生活に。 外出も控えるようになり、夏場の外出には、密閉したタクシーに閉じこもる他なかった。 部屋でも、カーテンで窓を四六…

「プルーストってどんな人?」前編 -彼の文章の秘密と、愛について-

アラン・ド・ボトン『プルーストによる人生改善法』を読む。 期待してた以上にに面白かった。 プルーストってどんな人? ある当時の駐仏英国大使曰く、「これまで私が出会った中で一番驚くべき男だ」 なぜか。 「なにしろディナーのあいだも外套を着たままだ…

結局、「顧客満足 < 数字(売上)目標」にしかなってない場合 -「経営戦略」初級編-

三品和弘『経営戦略を問いなおす』を読む。 日本とアメリカの大企業のことばかり書かれている。 まあ、好著ではある。 顧客を前にして、売上目標を語る愚かしさ(34頁)。 顧客第一とかいっておきながら、その第一であるはずの顧客満足(目標)が、売上目…

「頑張ったのに報われない」、お役所の職員編 -打開策は「お褒めの言葉」と「宣伝」?-

またしても、山本直治『実は悲惨な公務員』を読む。 仮にある役所が、本当に必要な政策ができて、翌年組織と定員を拡充したいと考えたとする。 でも、昨今の財政難もあって、そう簡単にできない。(著者曰く、政治的な決断があれば別らしい) そこで、人員や…

人手不足な公務員職もあるよ -国家公務員の"天下り"問題とか、地方・中央のアンバランスな件とか-

山本直治『実は悲惨な公務員』を読む。 ただ、タイトルが正直釣りで、正式タイトルは、「実際のところ、公務員ってどうよ?」みたいな感じ。 でも中身はマトモな本です。 んで、中身。 外郭団体の職員を含んだ、政府部門の就労者数は、国税庁がまとめた源泉所…

製造してる国の労働環境より、製造してる商品の安全性 orz な日本国 -あと、輸入品と雇用について-

丸川知雄『「中国なし」で生活できるか』を再び読む。 欧米の場合、企業が発展途上国の労働者を酷使して製品を作ることには批判的。 そうした批判を受けないように、中国に生産拠点を置く欧米企業は、?労働者の作業環境を整え、?環境汚染に気を配り、?従業員…

農業と「食の安全」の実情について -自給率と食中毒-

丸川知雄『「中国なし」で生活できるか』を読む。 まあ、結論から言うと、現状できない。 幾つか面白い所を取り上げたい。 例えば、無農薬・減農薬に向いているのは、むしろ中国というお話。 山東省は日本向け野菜の最大の産地に当たる。 日本より乾燥した気…