国歌斉唱と、トナカイと、地方自治と -大人な合意って奴を、生徒に見せてあげてね-

 新保信長『国歌斉唱』を読む。
 内容は普通。まあ強制は良くないんじゃないかな、的な内容。
 一応ちゃんとしらべてて、「緑の山河」とか「われら愛す」の話題も出てくる。
 ピチカート・ファイヴの「君が代」の話も出てる。
 松山千春が、君が代に敬意を表しつつ、一方で、(当時の国旗国家法の)法制化には反対だったことも、書いている(210頁)。

 だが、本書を読んで一番驚きなのは、スウェーデン人と日本人のハーフであるLiLiCoさん(王様のブランチに出ておられる)の好物が、「トナカイ」であることだ。
 伊藤かな恵さんも、びっくりだね。



 最近、国歌のことが話題になっていたが

 この件についてお勧めするサイトは、以下の通り。

・「国旗国歌を大切にしないからだめなのか、職務上反抗的な態度は許されないからだめなのか、はらわたが煮えくり返るからだめなのか。」(『女教師ブログ』様)
 2006年の記事だが、色あせぬ内容。「国歌を政争の具にしないためには、強制とかやめとけよ」という明瞭なスタンス。

・「国旗掲揚、国歌斉唱に関する諸外国の判例・事例
 諸外国の事例が確認できる。「ヨーロッパの立憲君主国では学校での国旗掲揚や国歌斉唱をすることが殆ど無い」という記述が重要。

・「諸外国における国旗,国歌の取扱い
 先進諸国の場合だと、国旗国歌の取り扱いについて、国レベルの義務規定がないか、そもそも学校で掲揚・演奏をしない、ということを確認できる。

・「君が代不起立訴訟最高裁判決に関する山口元一( @GenYamaguchi )氏のツイート」(Togetter)
 先の「君が代」訴訟に関して、必読。舞台裏は、あんまり報道されなかったですよね。



 以下、試論。



 地方レベルの話。
 最後に、ブコメにも書いたけれども、「もし地方分権(より正確には「地方自治」というべき)の真の意義を考えるなら、"下からの民主主義"(=各校の生徒及びPTAの内部の熟議)を尊重すべき」じゃないかな。
 もはや禍根ともいうべき対立を解決する方法が、結局弾圧同然の行為だなんて、生徒が見たらガッカリするだろう(あるいは、生徒に悪影響だろw)。
 最終的には、生徒一人ひとりの意思こそが尊重されて然るべきでしょ。彼らのための儀式だよ。
 そのためにこそ、大人たちは熟慮すべきであり、その合意過程が生徒の模範たるべきであって
。「府知事と不愉快な仲間たち」の振舞いは、そういう意味で実に非教育的じゃないかなw



 国レベルの話。
 業務である以上公務員は従わねばならない、という判決が出たけれども、そもそもあんなの業務に値するのかどうか。正直税金の無駄じゃないかな。ああいうの。というより、時間の無駄だし。
 仮に、国歌斉唱の本来的意義が、構成員の意思の統一(矯正)にあるとするならば、こんな左右の政党で(あるいは政党内でさえ)意見が割れちゃうような"業務"は、構成員の意思の統一の障害物でしかないと思います。(構成員の意思統一は、もっとソフトなものでおやりになったらいかがでしょうかね)
 悪いことは言いません。こんな役立たずな慣例、儀式から排除した方がいいですよ。もちろん、この問題の解決に至る合意は、是非、生徒が直視するに足るやり方でお願いします。大人の"対話力"の見せ所です。



(追記 6/15)

 なぜか、いろんな人にブクマされてたみたいなので、補足としてお返事しておきたいと思います。

hitouban エロマンガゾーニング・レーティングに理解を示す程度に子供さんへの影響力を考えちゃうアタシ的には、※欄ATM=ぎんちゃんの意見にも一理ある希ガス。日の丸にも戌年マークを(←違う) 2011/06/15

 なるほど、日の丸・君が代は18歳になってからw、って話ですね。大変に興味深い考え(兼 ボケw)だと思われます。
 大人になって"判断力"を身につけてから、自分が日の丸・君が代にいかに向き合うのかを判断しよう、という考えですね。良い考えだと思います。
 帰化される方のことを考えるなら、この方法でも問題ないかもしれませんな。
 (最近帰化されたドナルド・キーン先生も、幼年から日の丸・君が代に接していたわけではありませんが、もう立派な愛国者様です。よかったですね。まあ、勤皇の人キーン先生なら、今上天皇の意思を汲んで、強制反対でしょうけどw

dwnrvr  リンク重宝/ 『内部の熟議』の結果、国歌国旗強制が(自ら)選ばれる可能性も大きいとは思う。各個人の意思こそが尊重されるべきなら、無強制一択。/そもそもこんなの"公共"教育機関の儀式からなくせ、という点に尽きる 2011/06/15

 この場合、熟議ってのは、多数決とイコールじゃあないわけです。
 相互に異なる利害を持つマジョリティとマイノリティが、相互の利害を調整し、相互に共存しあう方法を模索するまで、時間をかけて議論を行うことを、ここでは「熟議」と定義しております。
 各個人の意思が尊重されるまでは、彼らとの共存方法がきちんと構築されるまでは、当然強制なんぞありえない話だよね、と思います。
 まあ、その最善の方法は、「"公共"教育機関の儀式からなくせ」に尽きますよね。

momopopohate 入社式の規律や研修で社歌や社訓を覚えるのも、表現の自由があればやらなくていいんですね。はい、常識はずれの公務員思考。(  ゚,_ゝ゚)バカジャネーノ 2011/06/15

 日本で不幸なのは、自分自身が"社畜"であることにさえ気づかないという現象です。その現象を身をもって示された貴殿に、敬意を表しますw素敵な社畜脳」を見させていただきましたw
 (思想・良心の自由と、表現の自由を混同しているという致命的ミスをしてね? ということについては、かわいそうなので指摘しないことにしますねw)
 入社式や研修というのは、企業の、つまり一応、非公的な物に過ぎないのであって、ここで問われているのは、国歌斉唱とやらが、果たして公務員である学校教師の(公的な)"業務"に値するのかどうか、という問題なんですよね。その辺お分かりでしょうか。
 あと、社歌と社訓を強制されて、それを拒んでも、流石に解雇にはならないと思います。そんなつまらんこと、業務に励めば、取り返しくらい付くでしょう。顧客第一の会社であるなら。業績をあげてなお、社歌云々いわれるようでしたら、その会社はブラック濃厚です。身の振り方をお考えください。
 というわけで、ソックリお返しします。(  ゚,_ゝ゚)バカジャネーノ

gingin1234 色々考え、国旗国歌強制に反対という意見に賛成かな。ただ、それは同時に中韓への「謝罪強制教育」の撤廃も視野に入れたものでなければならない。 2011/06/15

 えーっと、その"色々考え"た過程を知りたいんですけどねw
 下でコメントいただいた、「現金自動預け払い機」さんの回答とともに、返答いたします。

>国旗国歌が強制というのなら、学校で旧日本軍の悪行をこれでもかと子供に教え込み、中国や韓国に対して否が応でも罪悪感を抱かせる教育を強制するのもどうなのか、と思います。

 逆に言いますが、旧日本軍の「悪行」を教える程度で、萎えちゃうフニャフニャ愛国心なら、そんなの抱くのはやめちゃったほうがいいんじゃないですかね。
 (90年代に、福田和也宮崎哲弥が、西部邁ら(当時『新しい歴史教科書』に参与)と袂を分かった理由ご存知でしょうか。自虐史観云々程度でなえる愛国心なら、んなヘナチョコなもんは愛国心でもなんでもない、って話ですよ)
 それに、「罪悪感」という感情程度で終わらされちゃ困るんですよね。その歴史を踏まえたうえで、どのように隣国と付き合うのか、という将来的展望まで考えてもらわなきゃ。

>国旗国歌を強制するな、というのなら、まずは中国や韓国に対する「謝罪の強制」もまた解消されなければならないでしょう。謝りたい人は謝ればいいですが、謝りたくない人は謝らなくても良い。それがまさに「強制」の無い教育というものです。

 歴史教育において、謝罪は強制されてないと思います。つーか、罪悪感と謝罪って別だと思いますけど。その点はご理解されておられますでしょうか。(罪悪感を抱いても、信条によって謝罪しないっていうこと自体は、ありうるのですよ。)
 っていうか、さっきご自分で、「中国や韓国に対して否が応でも罪悪感を抱かせる教育」って留保付けて書いているのに、「謝罪の強制」ってすり替えちゃうのは、レトリックとして上手くないので、やめた方がいいでしょう。

 真のナショナリストなら、歴史的な事実を全て受け入れ、"自国"の為した悪行・汚辱を受け入れてなお、その自国を受け入れるものだと思います。その強い愛によって。
 そういう姿勢なら、まあ、謝らないのは、行動として、自由ではあります。ただし、国家にその「悪行」を犯した「責任」があることくらいは、認識として、お認めになるべきでしょう。

>(南京虐殺を教えるな、というわけではなく、そういうのはきちんと自己判断ができるようになってから教えるべき。また、それに「謝罪」を強制させる教え方も禁止する、という考えです)。
ぜひとも謝罪強制教育の撤廃に協力していただきたく思います。

 ここでいわれている「きちんと自己判断ができるようになってから」という意味が良く分からないのですが。
 まさか、廃藩置県も教えるな、とおっしゃってるわけじゃないんですよねw?なぜ、よりにもよって「南京虐殺」という事例を出されたのか、ご説明された方がいいと思いますよw
 あと、「「謝罪」を強制させる教え方」というのも、いまいち良くわかりません。具体的に何を指しているのか、おっしゃられた方がいいと思います。
 まあ、そもそも、自国の兵士が占領先の民衆に危害を加えたら、普通"罪悪感"を抱くものだと思いますが。どうなんでしょ。
 申し訳ありませんが、おっしゃっていることが非具体的で、以上のようにしか解答しようにも解答できません。
 頑張ってください。