外国人犯罪に対する正しい態度 番外編(4)草野厚『政権交代の法則』

■80年代後半における外国人犯罪グローバル化の関係(の続き)■
 87年から93年にかけての来日外国人の一般刑法犯の検挙人員の方が増加傾向にあり、それ以降一般刑法犯の検挙人員のなかで来日外国人が2%程度の割合を占めることとなります。しかし、87年から93年にかけて何があってこのような結果が生まれたのか。あくまで仮説ですが、88年から92年にかけて、外国人登録者数が増加しており、これが関係することは予想されます(「第3章 我が国の少子高齢化・人口減少と東アジアの新たな経済的繁栄を目指した経済統合」『経済産業省』様)。
 もし、現在のような一般刑法犯の検挙人員のなかで来日外国人が2%程度の割合を占める状況を改め、それ以前の状態にしたいのなら、グローバル化の波をこうむる以前の社会に、日本の社会を戻す必要があると想定されます。
 20年前と比較して、外国人犯罪が増加したことは一応の事実と思われます。ただし、この増加はその背景に、外国貿易貨物の相対的増加をはじめとする社会構造の変化や、外国人登録者数の増加などの外国人労働の変化など、グローバル化がある可能性があります。具体的には、流入してくる外国人の質的変化や、これまでいた外国人の日本における環境の変化が、このとき以降あったと見るべきではないでしょうか。
 あくまで可能性としてですが、この点を指摘せずに、20年前との比較は生産的な議論とはならないでしょう。

■来日外国人内の犯罪者の割合は多いのか?■
 以上、「図録外国人犯罪の推移」(『社会実情データ図録』様。前掲。)のデータを使わせていただきました。感謝です。
 ただし、ひとつ疑問に思うこともあって、「この2%という水準であるが、外国人労働者の比率が1%である(図録3830)ので、2倍の検挙人員となっている。従って、外国人犯罪は多いと評価できる。」と述べています。
 これ自体は反証はできないので、基本的に問題ないなのですが、これを、悪用する人もいるかと思うので、これについて原因を考えます。
 すると仮説として、日本国籍の人間との収入・所得の格差の問題や、人的資本等の相対的な欠如を挙げられると思います(つまり、来日外国人たちの低所得の問題とか、職業的な不安定性とか、それをカバーする周囲の血縁などを含む人間関係が薄いとか)。要するに、前に取り上げた湯浅誠氏のいう「溜め」が足りない、という可能性があるのです。湯浅氏が言うように、単純に、「貧しき人々」を排除すれば終わり、という問題ではありません。
 もちろん、これは仮説に過ぎません。これについては、まず来日外国人たちの所得・収入の統計が必要です。そして、もしこの仮説が正しいなら、単純に彼らを排斥しても、問題は何も解決しません。(注2)

■来日及び在日である「外国人」の犯罪に対する適切な認識と対応■
 最後に。今後、ではどのように来日も在日も含んだ、「外国人犯罪」をどう考えるべきか。

手荒で組織的な犯罪は国籍を問わず(日本人による者であっても)排除すべき問題であり、その犯罪者のプロファイルの統計をとった場合、特定のグルーピングに犯罪率が高かった場合、そのグループを重点的に防犯活動を行うのが必要です。特定の国籍所持者による組織的犯罪が多いことが統計結果から判明した場合は、日本国としてその国に対して日本の秩序を乱さないように要請するのが筋であると考えます。

これは、前掲「治安悪化論争?っていうかなんていうか・・・」における、コメント欄での「Hide@欧州」様の発言です。冷静な議論とはこれをさすのでしょう。手続きの優先順位を間違えてはいけない。これが、この問題において実に重要なことなのです。
 ?組織的犯罪に対し、対策をとって重点的に防犯活動を行うこと、?もし特定の国の犯罪組織による犯罪が多いなら、当該国にきちんと外交的に働きかけること、以上の二点が重要です。そもそも外国人犯罪を考える際に、犯罪組織の存在を忘れてはいけません。これを忘れた議論のいかに多いことか。統計を見る際に気ををつけるべき一点です。また、もし外交的問題にするのなら、最初の議論に戻りますが、もっと使える統計を作りましょう。まずはそこからです。

(了)



(注1) これに関して、興味深い記事が、「在日コリアンを追い出せば犯罪激減?その2」(『ホンマかいな在日特権?』)です。曰く、「在日コリアンは日本人に比べ『貧困層が多い』うえにその多くが『都市部に集中』して」おり、「在日コリアンのように日本人に比べて圧倒的に少ない集団を比べる時に『居住地区』や『所得』を考慮せずにどうこう言うのは片手落ち」とのこと。
 これは、別の国籍の外国人などにも応用できる事柄かもしれません。貧困層が多く、都市部に集中しているのは、在日コリアンだけではないはずです。