欧州

(西)ドイツの長い戦後、そのキレイではない泥臭い道程 石田勇治『過去の克服』を読む(後編)

ヤスパースについて。 彼が1945年に「責任」について講義(ドイツ人自らが内面的な転換を図るもの)を行った時は、実は、その主張は世間の受け入れる所とはならなかった。 むしろ根拠のない誤解と批判に晒され、その真意、特に「形而上学の罪」について理解さ…

アデナウアーにおける「独仏の絆」的な何かの源流と、再軍備方法。 石田勇治『過去の克服』を読む(前編)

石田勇治『過去の克服 過去の克服: ヒトラー後のドイツ作者: 石田勇治出版社/メーカー: 白水社発売日: 2014/05/16メディア: 単行本この商品を含むブログを見る』を読む。 良本である。 ドイツにも、ナチ時代の過去を反省しようとする人々がいる一方、それを…

スウェーデンがソ連よりも平等、な一例。

■日本にもこういう本が欲しい。■ スウェーデン人が手元に置いて、必要があるたびに読む本が何冊かある。 […] まず『社会ガイド』(Samhälls Guiden)。これはそれぞれの市民が社会から受け取れるサービスを受益者カテゴリー別に整理して一覧表にしたもの。たと…

スウェーデンがソ連よりも平等、な一例。

■日本にもこういう本が欲しい。■ スウェーデン人が手元に置いて、必要があるたびに読む本が何冊かある。 […] まず『社会ガイド』(Samhälls Guiden)。これはそれぞれの市民が社会から受け取れるサービスを受益者カテゴリー別に整理して一覧表にしたもの。たと…

「イタリアの男はマザコン」という神話について ファビオ・ランベッリ『イタリア的考え方』(3)

■「マザコン」幻想と、偏見の問題■ 多くの西欧人にとって日本の男性はマザコンが多いというが、これもまたオリエンタリスティックな態度を表すと思う。 (145頁) 著者は、【イタリア人男性=マザコン】という、日本人のもつイメージに対して、次のように…

イタリアにだってマイノリティはいます ファビオ・ランベッリ『イタリア的考え方』(2)

■イタリアにおける多様なマイノリティ■ イタリアには(略)イタリア文化圏に属さない、異民族のイタリア人も住んでいるのである。 (82頁) よくよく考えたら、イタリアにもマイノリティはいるんです。 ざっと見ていきましょう。まず、シチリアとサルディ…

イタリアにおける原子力と、「南」への搾取 ファビオ・ランベッリ『イタリア的考え方』(1)

・ファビオ・ランベッリ『イタリア的考え方 日本人のためのイタリア入門』(筑摩書房 1997/2)■産業と科学技術:美術だけじゃないイタリア■ イタリアは世界で五番目か六番目の産業大国で、(略)イタリア人の研究者は芸術だけでなく世界の第一線の科学・技術…

ドイツ人の中のマイノリティ ・ヴォルガドイツ人 平野洋『伝説となった国・東ドイツ』(3)

■「俺たちの女」を盗られたネオナチ■ 以前聞き取りをした東のネオナチの青年たちは、反外国人の理由として「仕事を奪う」の他に「俺たちの女を盗る」ことをあげた。 (176頁) この根拠のない「所有」意識こそ、ナショナリズムの中にあるジェンダーバイア…

秘密警察・シュタージの傾向と対策、及び西側による東側の【搾取】 平野洋『伝説となった国・東ドイツ』(2)

■秘密警察・シュタージの支配方法■ 婉曲なやりかたとしては作家にいうんだ「紙がない」って。計画経済だから紙不足という事態もじっさいあったしね。さあーやっこさん悩むわけだ、なぜ自分の本は出版されないのか、本当に紙不足なのか、それとも……、と疑心暗…

東ドイツの裸体主義・男女平等・排他性 平野洋『伝説となった国・東ドイツ』(1)

平野洋『伝説となった国・東ドイツ』現代書館 (2002/08)■東ドイツの女性たち■ 社会主義時代の東では、月一回ハウスハルトタークとよばれた家事のための有給休暇日があり、働く女性たち−−当時は専業主婦というものが存在しなかったーーにとってこの日は歓迎さ…