借金があっても生活保護は受けられる 湯浅誠『本当に困った人のための生活保護申請マニュアル』(1)

どうすれば生活保護を勝ち取ることができるのか

湯浅誠『あなたにもできる!本当に困った人のための生活保護申請マニュアル』同文舘出版 (2005/08)

 実のところ、本書の内容については、『京都府職員労働組合』の頁に、書いてあります。抜粋すると、

・その1 生活困窮者であることを認める 「生活に困っているのは自分のせい」と考えるのはやめよう。まず「自分は困っている」と認めることが重要だ。
・その3 住まいを失っている場合 住民票がある場所に関係なく、現在いる場所での申請が可能。ただし、保護開始時に住まいがないと保護が開始されない。開始決定までにシェルターやアパートを見つけておく必要がある。
・その5 外国籍の場合 永住ビザや日本人の配偶者等ビザを持っていればOK。観光ビザや留学生ビザ、就労ビザの人は難しい。申請できるのは外国人登録証のある場所。離れた場所にいる場合は、登録証を取り寄せればいい。
・「稼動年齢」である六十五歳未満の人でも、もちろん生活保護は受けられる。
・その10 親族に「扶養照会」される 「背に腹は代えられない」と覚悟を決めてもらう。事前に親族に連絡しておくのもいい。DV被害者はこれをハッキリ断る。

といった、本書の内容の抜粋とも言える、著者による講演の内容が掲載されています。
 本書のテーマはずばり、「何をどうすれば、生活保護を勝ち取ることができるのか?」です。『吉田猫次郎のBLOG』様もいうように、「生活保護を本当に必要としている人が、門前払いをくらったりしてなかなか通りにくいという現実」があるのです。
 どれだけ「生活保護の要件を満たしているのに追い返された人たち」がいたか(148頁)と述べる著者は、「役所のパンフレット類はもちろんこと、生活保護関連の本を見ても、ほとんどの場合、「くわしくは福祉事務所で相談しましょう」としか書かれていない。そこが一番の関門だというのに」(31頁)と、指摘します。
 相談に行っても、相談員の尋問のような質問攻めや非協力的な態度によって追い返されたり、あるいはその態度に怒りを覚えて相談者自身の方からあきらめてしまうのです。労力をかけ、闘ってはじめて実現できる制度とは、しかしいったい何なのか。著者は、この「一番の関門」をくぐるための手を、具体的に述べていきます。列挙すると、

・借金があっても生活保護は受けられる。(*注1)
・居候の身分でも、住居がなくても大丈夫。
・相談員の攻撃に耐えろ、打ち勝て。
・仕事をしていても保護を受けられる。
・仕事探しの記録はきちんと残せ
・「就労自立」の姿勢を見せると手続きがしやすい。
・病気なら、診断書をもらえ。
・「社会福祉協議会」への誘導をうまくかわせ。

 などなどです。
 しかし、本書最大のツボは、申請書提出の段です。
 そもそも、生活保護の申請書提出は、「誰にでも公的に認められた行為」(138頁)であり、仮に却下されても、却下理由を書面で提出させることができるというのです。
 用紙を手に入れられないなら、自分で申請書を作っていいのです(141頁)。
そして、一旦提出したら、長居しないことです。もちろん、あらかじめコピーをとっておき、提出したあとも、提出した証拠を、写真なんかで残すことをわすれてはいけません(142頁)。もし、申請が却下されても、大丈夫、不服審査請求があります(161−164頁)。また、わけのわからない書類(保護の「辞退書」など)を書かされる危険もあるので、気をつけましょう(171頁)。

 救いの道は存在しているのに、それがどこにあるのか、そもそもそんなものがあるのか自体、知らないがゆえに救われない。このような事態を防ぐために本書はあります。制度を知り、方法を熟知することで、きちんとした対応も可能なのです。こうした救済のための制度へのアクセスのしにくさこそ、現在の「貧困」問題の原因の一つです。

(続く)

(*注1)生活保護を受けても、借金の返済義務はなくなりませんが、返済期間の延長とか一時支払い停止とかは可能です。ただし、借金の度が過ぎる場合、債務整理をした方がいい場合もあるようです。まずは、弁護士や司法書士へご相談を。