自然離れと教育基本法 斎藤美奈子『それってどうなの主義』(2)

■自然離れについて■
 通常、子供の自然離れの原因としては、子供の周りの自然の少なさが、よく指摘されていました。しかし、著者は、岡田朝雄氏の意見を引いて(192頁)、次のように言います。「1970年代以降、列島改造論によって開発が進むとともに、「生き物を捕ってはいけません。観察するだけにしましょう」というキャンペーンがはじまった」、と。
 要するに、自然保護の運動が、かえって子供から自然に接する機会を減退させたというわけです。このような意見は、昆虫採集の推進派、あるいは擁護派によって唱えられる言説のようです。真偽のほどは、虫については詳しいとは言いがたい身の上ですので、今回は、「日本昆虫協会」のホームページを紹介するに留めて、話を終えたいと思います。無論、トップページになど、リンクしませんが(このふざけた理由については、こちらをご参照ください)。

教育基本法について■
 教育基本法にある「態度」という表記について、「心は外から読めないが、態度は目で見てチェックできる」から、「態度」は「心」よりたちが悪い(122頁)とも述べています。単語レベルの違いでも、これだけ違うのです。
 で、ウェブの意見を見てみると、「態度を養う」という表記についていろんな意見がある模様です。基本的に、「態度を養う」への批判は、例えば、
 ?「この「態度」っていうのは誰が判断するのか?/国家にとって態度が悪ければそれは罰せられるということなのか?/例えば、「君が代を元気な声で歌う」ことや「天皇陛下万歳と叫ぶこと」が、「わが国の郷土を愛する態度」って決められてしまえば、そこに逆らうと罰せられるということなの?」という、『つぶやきいわぢろう』様のご意見。
 ?「「態度を養う」という規定によって、心の中にまで国家や行政が入り込んでくることになります。」という、俵義文(子どもと教科書全国ネット21事務局長)氏のご意見。
 以上、このような意見があるようです。前者は、国家の恣意的な判断を疑い、後者は、「態度」への介入を通じた「心」への国家への介入を警戒しているようです
 『眞悟の時事通信バックナンバー』様は、別の理由で批判をしているようです。
 まず、自身が出席した検討会での意見を挙げます。どうやらこの会合のメンバーは、「態度を養う」の表記について、「「教育の目標」とは,そういう「態度」をさせることであって「心」とは別物だということにならないか。」と警戒しているようで、「卒業式で左翼教師が生徒に国旗・国歌を尊重する「態度」をとらせるが、平素は国旗・国歌を無視する「心」を教え続けることも,「教育の目標」に適合することになるではないか。」と述べ、「左翼」の行動を警戒していることが伺えます。
 さらに、第十条の「教育は,不当な支配に服することなく・・・」という文言についても、これを「楯にして、例えば左翼的偏向教育も,それを是正しようとする意見は「不当な支配」として排除して続けることができたのである。」という風に不満を漏らしている様子です。
 で、このブログの主様のご意見は、「国家の担う国民教育の目的は,国家の存立と不可分」というもので、「改正案は、この教育と国家の運命との不可分の関係を押さえていないので,教育における「国を愛する心」の位置付けができていない」というお考えのようです。
 そんで、キケロの意見、「友情や親子の愛や夫婦の愛が大切なことは我々は知っている。しかし、「祖国への愛」がなければ,それら大切な人間愛も結局は無意味なものとなる。」を引いて、「現在の我が国においても、「祖国への愛」は他の全ての人間愛を包含する崇高な愛として把握されなければならないと思う。」と述べています。
 では、これに対して、検討しましょう。

(続く)