高野秀行『イスラム飲酒紀行』を読んだ。
面白い。
時間がないので、特に面白かったところだけ。

- 作者: 高野秀行,森清
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 2011/06/25
- メディア: 単行本
- 購入: 4人 クリック: 102回
- この商品を含むブログ (34件) を見る
ホメイニ師の「柔軟さ」
「イスラムでは『鱗のない魚は食べてはいけない』とされている。ただあまりに一般庶民に人気なため、ホメイニ師が『ウズンブルンには尻尾の近くに少しだけ鱗がある』とファトワ(宗教的見解)を発令し、やっと公に食べることができるようになったという経緯もある (133頁)
ホメイニといえば、悪魔の詩事件を想起される人も多いが、こういう一面もある人だそうな。*1
イスラームは、いつだって、意外なところは柔軟である。
酒を飲むムスリム
オスマン朝の頃から、酒を飲む人は飲んでいたと思いますよ。キリスト教徒は当然飲んでいたし、酒好きだったと伝えられている皇帝もいますからね。ふつうに酒が飲めるから、アタテュルクだって若い頃から酒飲みになったんだろうし…… (218頁)
著者・高野氏の連れの男性の一言である。
アタテュルクとは、トルコのケマル・アタテュルクのことである。
建前と本音は、当然、あちらにもある。
ホメイニ師の「柔軟さ」 2
世界に誇るイランの偉大なる詩人なのだ。『オマル・ハイヤームの言う酒は酒ではない』という曲芸的解釈で整合性をつけ、自陣に取り込んでしまう。イラン人、恐るべしである。 (306頁)
オマル・ハイヤーム、言わずと知れた、イランの大詩人である。
酒を讃える詩とかも書いている。
なんと、この詩人は現代イランでも否定されておらず、それどころか尊敬されている。
ホメイニが、詩に出てくる「酒」を現実の酒ではなく、「神との合一」などの宗教的陶酔の象徴として解釈して整合性をとっているためだという。
そんな無茶な、という話。*2
(未完)
*1:悪魔の詩事件の際のホメイニ師の「見解」の是非をめぐっては、イスラーム法からの批判が存在する。詳細はhttp://www.maroon.dti.ne.jp/knight999/syousetu.htmなどを。ホメイニ師のシーア派世界における位置づけについては、http://flavius.cocolog-nifty.com/blog/2009/06/post-6431.htmlなども参照されるべき。
*2:上の註を考えるに、イスラーム法を「逸脱」して作家に死刑を宣告するときのホメイニ師と、オマル・ハイヤームの詩を無理に解釈してしまうときのホメイニ師は、どこか似ている、ような気がしなくもない。