2010-01-01から1年間の記事一覧

リフレ政策が「【世界の】常識」であるということ  【短評】

「熱帯夜に、「アンチ・リフレ派」をからかってみる -「上手い話」じゃなくて「常識」です-」の続きです。 リフレ派の主張って言うのは、「上手い話」じゃなくて、いわば「常識」なのです。プロトタイプな「アンチ・リフレ」発言する人というのは、「常識」…

熱帯夜、「アンチ・リフレ派」をからかってみる -「上手い話」じゃなくて「常識」です- (追記あり)

以前、リフレ派に対する反論などに対して、反批判(の紹介)を行いました。しかし、世の中には、まだまだ「アンチ・リフレ派」がいらっしゃるようです。典型的(プロトタイプ)な反論が寄せられている様なので、本の紹介なども含めて、書いてみようと思いま…

多数代表制と比例代表制 -ついでにバジョット /加藤秀治郎『日本の選挙』を読む(2)

さて前回、中選挙区制について説明しました。 ちなみにこの制度、実質的に山県有朋がスタートさせたものです。原敬が一時期小選挙区制に戻したものの、すぐに護憲三派内閣が中選挙区制という形で、戻します(p36、37)。大選挙区と小選挙区での間を取る…

佐藤優の「明石作戦」擁護 に対する疑問  /稲葉千晴『明石工作』について

これが、ガセであることを祈りましょう。とあるところからのコピペ。 藤原: 明石の工作は実は効果がなかったとしている本が日本でも出ましたよね。あれは信頼できるんですか。 佐藤: 私はあまり信頼していません。明石の行動記録についてはロシアですでに…

意外な中国外交の側面 -川島真,編『中国の外交 自己認識と課題』

中国という国は、どんな外交をやっているのか。最近はアフリカでの外交のことがよく話題に上がるようです。 それを学ぶのに、川島真,編『中国の外交 自己認識と課題』はお勧めです。日本の第一線の研究者が、論文を書いていますし、興味あるテーマからお読み…

消費税問題もいいけど、参院改革もね 加藤秀治郎『日本の選挙』を読む(1)

またもや国会がねじれてしまったわけですが、さて、どうしましょう。もう消費税とか以前の問題です。 そもそも、日本の議会制度自体おかしい、と思った方も多いのでは。確かに、改善すべきところ、山ほどあります。加藤秀治郎『日本の選挙 何を変えれば政治…

小川紳介に学ぶ、「プロ」であるということ -"無いなら自分で作ること"について-

『小川紳介 (名古屋シネマテーク叢書)』によると、上野英信は次のように述べているらしい。革命論より前に、電気の簡単な配線が直せるとか、井戸のポンプのバルブをどう変えたらいいかとか、そういうことを勉強せよ、と。 上野は、『追われゆく坑夫たち』、…

中谷宇吉郎とラッセル /核兵器と反共主義の関係

氏は当時、アメリカに滞在していたが、その文は「ちえのない人々−−ビキニ被災をアメリカでみて」と題されていた。アメリカ政府が第五福竜丸の船員に、すぐ、たくさんの見舞金を出し、船も即刻買いとってしまえば、日米おたがいによいのではないか、ことをお…

「唯一の被爆国」というナショナリズムについて 【短評】

前回、高田純『核爆発災害』を紹介しました。ですので今回も、「被爆」という問題について、書きたいと思います。 「日本は唯一の被爆国」との表現に対して、次のような反論があります(注1)。 「世界で初めて原爆の犠牲になったのは、史上初の原爆実験に…

ミサイル防衛よりも、やはり地下室・シェルター? 高田純『核爆発災害』を読む

高田純『核爆発災害 そのとき何が起こるのか』は、核爆発とその被害の実情について教えてくれます。 例えば、核兵器の衝撃波は、伏せることで、大幅にこの種の危険から逃れることができるといいます(6頁)。爆心からの距離などにもよるが、核兵器の衝撃波…

「国際人」と「独特なナショナリズム」 /とある保守派への平凡な反論 【短評】

ヒッチハイクをやり、皿洗いや掃除をやりながら、無国籍人として生きたから、一人前に生きた、国際人として生きたといえるのか。埒外者として、乞食として生きのびるだけなら、アメリカであろうがイギリスであろうが、いささかの厚顔ささえあれば、なんの人…

フィリピン・ミスチーフ礁と米軍基地問題 -海兵隊がいなくても島は取られないかも- 【短評】

普天間基地問題において、よく聞くのが、【普天間基地が撤退したら、日本は中国に領土である島嶼を占領されてしまう】というものです。 もちろん論者によってニュアンスは違うのですが、その際よく持ち出されるのは、「ミスチーフ環礁」の件です。要するに、…

「孝」による側室制度の正当化は現代でも可能か? 【短評】

古田博司『東アジアの思想風景』によると、「白居易は、家では妓女をたくわえて遊んでいた」らしい(41頁)。農民の貧困や王朝の腐敗を絶句に託して政治批判をする一方、このようなことも行っていたようです。あらま。同じ振る舞いは、かの王献之も同じで…

イスラム武装勢力を刺激しない米軍の駐留方法(を勝手に考える) 【短評】

加藤朗『テロ 現代暴力論 (中公新書)』によると、84年のベイルートからの米軍撤退は、テロが原因でしたが、このテロにはシリアの関与が疑われたそうです(36頁)。 ベイルートから米軍が撤退して、やっと中近東から米軍は去った。しかし、アフガンにソ連…

改憲問題について -花咲く増税論争の影に in 参議院選挙2010 【短評】

今度の参議院選挙では、争点の中心は、「増税」であり、特に消費税が中心のようです。これについては、既に巷間で行き渡っていることです。まあ、増税問題については別途何か書きたいと考えております。 一方で、なっておかしくないのに、ほとんど争点になら…

パスカルを使った、ノルマリアンによる悪戯 【短評】

阿部良雄『若いヨーロッパ―パリ留学記』を読むと、こんなエピソードがあります。こんな感じです。 副校長でパスカル研究の大家プリジャン氏の住居の出口にバリケードを築いて、「われわれの不幸のほとんどすべては、自分の部屋にじっとしていられなかったこ…

仮説的に、九州への代替基地移設の可能性を考える /普天間問題と斬首戦略について

■これまでの斬首戦略に関する拙論のおさらい■ ・ソ連による、アフガンのアミン大統領暗殺作戦は、台湾での斬首戦略の参考にはなりません。 ・台湾側の軍事指揮権について、総統継承順位の法的整備のことは、念頭にありますか? ・海兵隊だけでなく、台湾の部…

「米国海兵隊の台湾派遣を法的に義務付けさせよ」という反論 小川和久『ヤマトンチュの大罪』(3)

■斬首戦略の現実性と、台湾国内で法的手続きの問題■ 「沖縄海兵隊の戦闘部隊、米「移転困難」 (2005年6月30日 読売新聞)米側の説明は今春、日米の外務・防衛当局の審議官級協議などで伝えられた。それによると、中台有事のシナリオとして、中国軍が特殊部…

アフガンでの「斬首戦略」は、台湾版には使えない?(追記あり) 小川和久『ヤマトンチュの大罪』(2)

■斬首戦略とは何か■ 「中台有事のシナリオとして、中国軍が特殊部隊だけを派遣して台湾の政権中枢を制圧し、親中政権を樹立して台湾を支配下に収めることを想定。親中政権が台湾全土を完全に掌握するまでの数日間に、在沖縄海兵隊を台湾に急派し、中国による…

海兵隊「即応後方配備」の行方 1996〜2010 -普天間基地問題の解決案について- 小川和久『ヤマトンチュの大罪』(1)

・小川和久『ヤマトンチュの大罪 日米安保の死角を撃つ!!』小学館 (1996/02)■1996年の普天間基地問題解決案■ 海兵隊の部隊を、基地は現在のレベルで維持したまま部隊だけをアメリカの領域に戻し、日本の周辺で緊張状態が生じる可能性が出てきたときのみ沖縄…

消費者代表の問題と、再度、職業教育について 濱口桂一郎『新しい労働社会』(8)

■労働者代表を、政治的決定プロセスへの参加させる■ 労働者代表と消費者代表を一名ずつ参加させ、その間の真剣な議論を通じて日本の社会経済政策を立案していくこと (210頁) これが著者の提案です。本書執筆当時、経済財政諮問会議には、民間として経済…

労働組合強化のために -EUの事例から-  濱口桂一郎『新しい労働社会』(7)

■労働組合強化のために -EUの事例から- ■ 「そこで現に働いている人たちがそこのルールを作っていくべきだと思っています。そのためには、そこで働いている人たちがその場で団結しなければしょうがないのですね」という著者の主張を叶えるには、どうすべきで…

利害を怖れないこと、ポピュリズム批判と労組について 濱口桂一郎『新しい労働社会』(6)

■労働組合再生のために -企業内への包摂か、業界・職種同士の連帯か-■ 現代の日本において労働組合は、メンバーを正社員に限定しており、非正規労働者や管理職などの人々は排除されています。この問題をどうすべきでしょうか。 著者は次のように主張していま…

社会保険と労働時間 -ベーシック・インカムを唱える前に- 濱口桂一郎『新しい労働社会』(5)

■ベーシック・インカムと、労働における「承認」の側面■ 著者は、労働を社会からの承認を受けるのために必要なものと考えています。そのため、社会的承認の機会を奪うベーシック・インカム論には否定的です。曰く、「怠惰の報酬を社会一般に要求するならば、…

「職業教育」を日本の戦後労働史から考える(長い注付) 濱口桂一郎『新しい労働社会』(4)

■「公的給付」の中身、そして「宿題」■ 前稿で取り上げた公的給付の中身について、まず書きます。著者曰く、 欧州諸国の福祉国家とは、年金や医療といった日本と共通する社会保障制度だけではなく、育児、教育、住宅といった分野においても社会政策的な再分…

「新しい労働社会」をシングルマザーの視点から考える 濱口桂一郎『新しい労働社会』(3)

■非正規労働問題の解決について■ (引用者注:EUの有期労働指令では)本来臨時短期的でない業務に有期契約を用いることで解雇規制を潜脱することを防止するため、有期契約の更新に正当な理由、一定期間の上限、一定回数の上限を定めることとしているのです…

「正社員」というレール、中小(零細)企業という路傍 濱口桂一郎『新しい労働社会』(2)

■本書のおさらい。「正社員とその家族」というレール■ 第2章について触れる前に、あらかじめ本書の肝について、おさらいをしましょう。 本書が指摘する日本の雇用制度は、次のようにまとめられます。 日本では、特定の職務に規定されない、組織のメンバーと…

「休む時間」より「残業代」を優先する、日本という国 濱口桂一郎『新しい労働社会』(1)

濱口桂一郎『新しい労働社会 雇用システムの再構築へ』岩波書店(2009/07)■「休む時間」より「残業代」を優先する、日本という国■ 健康のための労働時間規制という発想は日本の法制からはほとんど失われてしまったのです。こうした法制の展開が、労働の現場で…

「イタリアの男はマザコン」という神話について ファビオ・ランベッリ『イタリア的考え方』(3)

■「マザコン」幻想と、偏見の問題■ 多くの西欧人にとって日本の男性はマザコンが多いというが、これもまたオリエンタリスティックな態度を表すと思う。 (145頁) 著者は、【イタリア人男性=マザコン】という、日本人のもつイメージに対して、次のように…

イタリアにだってマイノリティはいます ファビオ・ランベッリ『イタリア的考え方』(2)

■イタリアにおける多様なマイノリティ■ イタリアには(略)イタリア文化圏に属さない、異民族のイタリア人も住んでいるのである。 (82頁) よくよく考えたら、イタリアにもマイノリティはいるんです。 ざっと見ていきましょう。まず、シチリアとサルディ…